第1話 救貧『 じゃが ゆ 』。 (シーン・2 カイタ、起こされる。)
文字数 1,435文字
「…お~い… 起きれるか~??」
ミツマタ先輩の声がする…
「そのちゃ~ん! だいじょうぶ~??」
アマリ先輩の声もする…
皆太はかろうじて、薄眼を開けた…
「あ、起きた起きた!」
「…あ… どうも、すんません…」
「状況わかってるかー?」
「はー、い…。」
もそもそと起き上がる皆太。
と。正面に… 心配そうな顔の…
社長が!
「あわわわわ…! すいません、社長ッ!」
「いやべつにね。謝らなくてもいいけどね…?」
社長はちょっと困ったような笑顔で。
「目撃証言によるとだ。
園枝君は今週に入ってから、お昼ごはんがいつも食パン2枚のみ、だったと。」
「あ、はい…」
「朝昼晩と食パン2枚ずつで6枚切りを1日1袋食べて。
一番安いスポドリ2リットル1日1本とで、全摂取栄養素とカロリーであったと。」
「はい…」
「五日間、それ?」
「はい…」
「…そりゃ~… 倒れるよ、ねぇ…?」
「はい… すいません… 」
「いやそりゃ謝ってもらう話じゃなくて。」
「はい」
「うちはアニメ会社にしてはまともな金額の給料、払ってるつもりなんだけど?」
「はい、それはもう!」
「…なんで、入社3か月目で、少ないとは言え月給満額受領したはずの正社員が…
そこまで金欠…?」
「……………あ”~ …………………」
皆太は貧血の青い顔を赤紫に染めて、しあさっての方角に逃避した。
「あのですね…」
「うん」
「だってほら、予約特典の振り込みって! 期限があるじゃないですか!」
「…うん?」
「だって『魔法老女ふぁんきー・マミー☆』のスピンオフOVAの!
予約特典の! 極秘動画が! …ですね!」
「おぉ。ふぁんきー!と来たか…?」
誰かのつっこみ笑いの声がする。
「振り込み期限が! 先週の土曜日までで…ッ!」
…一気に言い切ってしまったら、貧血が再発してふらふら~っとなった…
そして遠慮なく爆笑し、笑いころげる一同。
「ぎゃはははは」
「ぶふふふふ…」
「いや~ん、そのちゃんったら~ッっっっ」
「よく言った!」
「ファンの鑑!」
「それでこそ! アニメ戦士であ~るッ」
(机を叩く平手のバンバン言う音と、ぱふぱふ~!とかいうパーティーグッズの音響。)
「…………あ”~………」
社長も必死で笑いをこらえながら。
「言わなかったっけ~? 同業者だから、うち、その手の新作や極秘特典とかは、
予約先行発売より前に、『相互贈呈協定』ってやつで…
タダで、手に入るんだけど…?」
「…え……………」
「もちろん、社員が社内で、研究研鑽のために鑑賞する分には、…無料な?」
「…まぁ、予約特典グッズとかは、つかないけどね~w」
「…あ、そ、そうなんですね…?」
ツッコミの内容も耳にはしつつ、涙目になる園枝。
「…しかし、まぁ…」
「ですね。」
「ヨカッタな~園枝。おま、クビが繋がったぞ?」
「は?」
「
クビ♡」
にっこり笑う美女先輩ズに首ちょんぱの動作をされて園枝はぞぞっとなった。
「…えぇぇ?」
「…まぁ。」
「まぁ、ねぇ…w」
「そこで振込先がエロきも動画だったら、あたしたちが! 許さないけどォ~☆」
「マニアックだな~!『魔法老女ふぁんきー☆』www」
「ってことで~…!」
「お許しが出たと思うので~…♪」
園枝がイミフ顔でキョドっているうちに。
社長を含め、並み居る大先輩がたは、芝居がかった動作で。
ざざざ… ざぁっと!
後ろをふりむき、招きの手を広げた。
「いざ! いでませぃ~!」
「アニメ神! さま~っ♡」