第3話
文字数 1,007文字
「――さ、仕上がったよ、プレサ。どこかしっくりこないところはないかな?」
仕事道具を手際よく片しながらヌウが訊ねてきます。うとうとしかかっていたプレサはハッと目を覚まし、
「う? ううん、平気。あたしはいつもと変わらず絶好調よ。それより、とつぜん石になって押しかけてきたりしてヌウは迷惑だったんじゃないかしら……」
「迷惑なんかじゃないさ。多少ビックリはしたけどね。――それよりも、我ながらなんと最高傑作なできばえだろうか。ああ、僕は今すぐ君に接吻 したいよ」
フェチ全開な目付きでうっとりとプレサの全身をながめ回すヌウ。ちょっぴり気持ちが悪いなと感じてしまったのはナイショです。
「やぁね、遠慮せずにいくらでも接吻 していいのよ? ん〜」
「いや、その前に。鏡を持ってくるから君も君の新たな美を拝むといい」
運ばれてきた全身鏡をウキウキとのぞき込んでみると、そこには
少しむっちりした体型にゆるやかなケープをまとい、腕にはシンボルである藻が絡みついています。なるほど、ケープのリアルなヒダから長いまつ毛までみごとなまでの再現度です。
さすがは名石工のヌウと褒めたたえたいところではありますが――
「こうじゃないでしょ!? なぜニウベを彫ったんだー!! 元々はあたしの体なんだからあたしを彫るのが筋でしょうが!!」
次の瞬間、プレサは大爆発を起こしていました。
「いや、それは無理」
ヌウはきっぱりと言います。
「何度も言い続けてきたが、僕はニウベの忠実なる下僕 で、信者で、心の愛人だ。そんな僕が彼女以外の女性の像を彫るなんて絶対にあり得ないし許されない!」
「キモッ! ならせめて、あたしを元の石に戻せっ! 戻しやがれー!!」
「戻せるわけないだろ! ああもう、君にはうんざりだよ!」
「失礼。ヌウ石工はこちらにおいでかな?」
修羅場にひょっこりと割り込んできたのはニウベの神官でした。
「はい? あっ、これはこれは神官殿!」
ヌウはうやうやしくこうべを垂れます。
「ずいぶんとにぎやかなようだが?」
「お気になさらず。して、本日は何用でありましょうか」
「うむ。久方ぶりにイケニエの儀が行われるでな。ニウベ神の像を一体、大至急彫り上げて欲しいのだが」
「…………」
ヌウは出来たてホヤホヤの最高傑作へ無言の視線を送りました。
「…………」
神官もつられてそちらを向きました。
「えっ? あなたたち……ウソでしょ?」
仕事道具を手際よく片しながらヌウが訊ねてきます。うとうとしかかっていたプレサはハッと目を覚まし、
「う? ううん、平気。あたしはいつもと変わらず絶好調よ。それより、とつぜん石になって押しかけてきたりしてヌウは迷惑だったんじゃないかしら……」
「迷惑なんかじゃないさ。多少ビックリはしたけどね。――それよりも、我ながらなんと最高傑作なできばえだろうか。ああ、僕は今すぐ君に
フェチ全開な目付きでうっとりとプレサの全身をながめ回すヌウ。ちょっぴり気持ちが悪いなと感じてしまったのはナイショです。
「やぁね、遠慮せずにいくらでも
「いや、その前に。鏡を持ってくるから君も君の新たな美を拝むといい」
運ばれてきた全身鏡をウキウキとのぞき込んでみると、そこには
気高くほほ笑むニウベ
がおりました。少しむっちりした体型にゆるやかなケープをまとい、腕にはシンボルである藻が絡みついています。なるほど、ケープのリアルなヒダから長いまつ毛までみごとなまでの再現度です。
さすがは名石工のヌウと褒めたたえたいところではありますが――
「こうじゃないでしょ!? なぜニウベを彫ったんだー!! 元々はあたしの体なんだからあたしを彫るのが筋でしょうが!!」
次の瞬間、プレサは大爆発を起こしていました。
「いや、それは無理」
ヌウはきっぱりと言います。
「何度も言い続けてきたが、僕はニウベの忠実なる
「キモッ! ならせめて、あたしを元の石に戻せっ! 戻しやがれー!!」
「戻せるわけないだろ! ああもう、君にはうんざりだよ!」
「失礼。ヌウ石工はこちらにおいでかな?」
修羅場にひょっこりと割り込んできたのはニウベの神官でした。
「はい? あっ、これはこれは神官殿!」
ヌウはうやうやしくこうべを垂れます。
「ずいぶんとにぎやかなようだが?」
「お気になさらず。して、本日は何用でありましょうか」
「うむ。久方ぶりにイケニエの儀が行われるでな。ニウベ神の像を一体、大至急彫り上げて欲しいのだが」
「…………」
ヌウは出来たてホヤホヤの最高傑作へ無言の視線を送りました。
「…………」
神官もつられてそちらを向きました。
「えっ? あなたたち……ウソでしょ?」