1 Xくんとは誰だったのか
文字数 304文字
卒業文集 小六の終わりの春
誰もがくだらない でも楽しい
そんな下手くそな文字を連ねていた
ただ一人 その女の子だけが
文章の終わりにこう加えていた
「Xくんにあこがれてた」 と
中学に上がる前の春休み
僕らは男子だけで集まり
Xくんの正体を探ろうとした
謎の言葉を残した彼女は
東京の有名中学に進んでしまい
もはや この田舎町にはいない
アホで単純で自惚れだらけの
僕らは口にはしなかったけど
そのXくんは自分だと思っていた
彼女が一番可愛かったのは
紛れもない事実であって
好かれることは名誉だった
あれから何年経っただろう
彼女がどうしているかなど
誰一人知らないままになった
けれど ふと思う
今もまだ どこかの学校で
Xくんを想う女の子がいると
誰もがくだらない でも楽しい
そんな下手くそな文字を連ねていた
ただ一人 その女の子だけが
文章の終わりにこう加えていた
「Xくんにあこがれてた」 と
中学に上がる前の春休み
僕らは男子だけで集まり
Xくんの正体を探ろうとした
謎の言葉を残した彼女は
東京の有名中学に進んでしまい
もはや この田舎町にはいない
アホで単純で自惚れだらけの
僕らは口にはしなかったけど
そのXくんは自分だと思っていた
彼女が一番可愛かったのは
紛れもない事実であって
好かれることは名誉だった
あれから何年経っただろう
彼女がどうしているかなど
誰一人知らないままになった
けれど ふと思う
今もまだ どこかの学校で
Xくんを想う女の子がいると