1 Xくんとは誰だったのか

文字数 304文字

卒業文集 小六の終わりの春
誰もがくだらない でも楽しい
そんな下手くそな文字を連ねていた

ただ一人 その女の子だけが
文章の終わりにこう加えていた
「Xくんにあこがれてた」 と

中学に上がる前の春休み
僕らは男子だけで集まり
Xくんの正体を探ろうとした

謎の言葉を残した彼女は
東京の有名中学に進んでしまい
もはや この田舎町にはいない

アホで単純で自惚れだらけの
僕らは口にはしなかったけど
そのXくんは自分だと思っていた

彼女が一番可愛かったのは
紛れもない事実であって
好かれることは名誉だった

あれから何年経っただろう
彼女がどうしているかなど
誰一人知らないままになった

けれど ふと思う
今もまだ どこかの学校で
Xくんを想う女の子がいると
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み