3 夏休みとプールと私

文字数 650文字

運動神経は生まれつきじゃない
お父さんはそう言って励ました
だったら 頑張れるかなと思い
この夏はプールに通い詰めると
心に決めて泳げるまで頑張った

学校じゃなく市民プールにした
一人で邪魔されずにやりたかった
最初はみっともないよ 分かってた
端っこで水に浮かぶことからやった
顔をつけて息をしても繰り返した

それから一メートルを目標に泳ぐ
泳ぎ方なんてどうだっていいんだ
少しずつ手を着く場所を先にして
距離を伸ばしていった 亀の速度
続けるってすごいと初めて知った

自分なんて泳げなくていいんだ
そう諦めていたのが嘘みたいだ
距離は夏の半分で十五メートルに
夏の終わりには二十五に達していた
家族は誰も信じようとはしなかった

夏休み最終日に家族試験をした
プールを往復出来るかどうか
両親と姉に見守られながら泳ぐ
意地もあったけど 自信もあった
必死に泳ぎ 必死に息継ぎをし
気づけばプールを五往復もしていた

まだ続けられそう そんな気がした
でも お父さんストップが掛かった
もう充分だ 最高じゃないか と
やれば出来る子とはよく言うけれど
あれって誰にでも当てはまるのでは

夏に強くなった私は
冬のマラソンでも強くなった
後ろから数えて数人だったのが
学年で十番以内に入れるように

そうか そうなんだ
小学生のスポーツって
体力筋力で充分争えるって
気づかせてくれた 夏休み

センスや技能じゃないんだ
不器用だと思っていた私が
それを証明してしまった

もうすぐ中学生になる
もしかして運動部も入れるかな
身体の成長は心も強くするんだ
あの夏休みの頑張りに
私は自分に 拍手を送りたい
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