(四)桜の木誕生

文字数 574文字

 第三惑星人たちが怖がらない姿に変身する、という案が出た。

 しかしサクラ星人たちがその姿を変えて、地球の上で人間たちと共に暮らす方法は、唯ひとつしかなかった。それは植物化、具体的には桜の木になることだった。
 もしサクラ星人が桜の木になった場合、桜の花が咲いている間だけ、分身して人間の姿に化身することも可能だった。ただしそれには制約があり、一度化身するともうその姿を変えることは出来ない。つまり同一人物にしか化身出来ず、かつ年を取ることも出来ないのである。
 隊長は呟いた。
「仕方あるまい。そうでもしないと第三惑星人たちを慰めるという、我々の目的、使命を果たすことは出来ないのだから」
 確かに桜源郷に於いても、桜の開花はサクラ星人たちを大いに喜ばせ、慰めた。そういう意味では桜の木になって、桜の木としてこの地球上に存在するということ。それは一石二鳥、まこと理に叶ったことではあったのである。

 こうして隊長を除いた第三惑星人慰め隊のメンバー全員が、その姿を桜の木に変えたのだった。つまりこの時、地球上に桜の木が誕生したという訳。
 隊長は一旦桜源郷に帰星し、事の次第を報告した。そして以降、第三惑星人慰め隊の第二弾、第三弾……が、次々と地球に送り出されたのである。その全員が、桜の木になった。こうして地球の上には、どんどん桜の木が増えていったのであった。
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