第3話 虹色の翼と髪を持つ男の子

文字数 1,856文字

その男の子の赤ちゃんの肌は、透き通るように白い。
背中に生えた翼は真っ白だが、光が当たると虹のように七色に輝く。
そして、髪は金髪でクルクルの巻毛。
この髪も翼と同じように光が当たると七色に輝くのだった。
男の子の誕生の一部始終を見ていた天使達は、一斉に溜息をついた。

「とても可愛らしいわ…」
「なんて綺麗な子なんでしょう…」

皆、その子から目を離せない。

「ウ〜ン…」

男の子は思いっ切り背伸びをすると、天使達をジッと見た。
そして、ハープを抱えた女性の天使と目を合わせるとニッコリと笑った。

「ほら、ハーニー。あなたと目が合ったわ。抱き締めてあげて。」

ハーニーと呼ばれる天使が、そっと両手を広げると男の子は、パタパタと翼を羽ばたかせ腕の中に飛び込んで来た。
ギュッと抱き締めると、男の子は顔を上げてジッとハーニーを見つめた。

「初めまして。私はハーニーよ。あなたに名前を付けるわね。」

優しく笑いかけながら話しかけると、男の子はハーニーの顔を見つめたまま呟いた。

「ハーニー…名前…付ける…」

ハーニーや他の天使達は驚いた。
天使の赤ちゃんの成長はとても早い。
しかし、生まれた直後に話した子は始めてだった。

「今の聞いた?もう話したわ…」
「生まれたばかりなのに…」
「本当に不思議な子…」

ハーニーは、他の天使達の呟きに耳を傾けながらも、男の子の顔をジッと見つめ名前を考えていた。
そして、ハーニーは思い付いたようにパーッと顔を輝かせニッコリと笑い言った。

「決めたわ!この子の名前はシャイニーよ。虹色にキラキラ輝く子だから…」

男の子は、ハーニーの言葉を一言一句聞き漏らさないように聞いていたが、すぐにニッコリと笑った。

「良かった。名前を気に入ってくれたのね。」

ハーニーがホッとしていると、男の子は頷きながら呟いた。

「名前…シャイニー…」
「そうよ。あなたはシャイニーよ。よろしくね。」

ハーニーは、シャイニーを優しく抱き締めた。

「素敵な名前ね。」
「この子にピッタリだ!」
「よろしくね。シャイニー。」

他の天使達は、抱き締められているシャイニーを覗き込みながら笑顔で話しかけた。

シャイニーは、確認するかのように1人ずつ見つめるとニッコリと笑うのだった。

「なんて可愛らしい子なの…」
「この子の笑顔を見ると心が温かくなるわ。」
「うん。この笑顔をずっと見ていたくなるよ。」

天使達は思わずホ〜ッと溜息をついた。

「あらあら。みんな、あなたの笑顔から目が離せないようね。」

ハーニーはクスクスと笑いながら、一枚の葉をどこからともなく取り出した。

「さあ、シャイニー、朝露よ。飲んで。」

ハーニーがシャイニーの口元へ葉を近付けると、葉の先から朝露が一滴零れ落ち、シャイニーの口へ吸い込まれるように落ちていった。

……コクン……

シャイニーが朝露を飲み込むと、後から後から湧き出し、口の中に吸い込まれていった。

「あなたがお腹一杯になるまで朝露は湧き出るの。沢山飲んでね。」

シャイニーは、美味しそうに飲み続けたが、少し経つと朝露はピタリと止まった。

「お腹一杯になったのね。」

ハーニーは持っていた葉をパッと消し、シャイニーに雲を紡いだ糸で編まれた服を着せた。
雲の服は、とても着心地がいい。
フワフワし、優しく温かい太陽の光に包まれているような不思議な服である。

……スースースー……

お腹一杯になり、心地良い雲の服に身を包まれたシャイニーは、いつの間にかスヤスヤと眠ってしまっていた。

「さて、起きたら成長の部屋に連れて行かないと…」

ハーニーは、シャイニーをゆりかごに寝かせながら呟いた。

「この寝顔、ずっと見ていたいわね…」

フルート奏者のコルネが、ハーニーに寄り添うように座りながら言った。

「そうなのよ…この子と離れるのが凄く寂しいの…今までは、こんか事なかったのに…」

「大丈夫よ。きっとシャイニーは、ちょくちょくあなたに会いに来ると思うわ。寂しい時は、ハーニーが会いに行けばいいし。」

「そうよね。私も会いに行くわ。本当にこの子は不思議な子。どんどん惹きつけられる感じ…これが、この子の力なのかしら…」

「そうかもしれないわね…これからのシャイニーの成長が楽しみね。」

2人は、ゆりかごを優しく揺らしながら、スヤスヤ眠るシャイニーを見つめるのだった。
















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登場人物紹介

シャイニー


特別な力を持った天使で、髪と翼は光が当たると虹色に輝く。

寂しがり屋で引っ込み思案だが、様々な経験を通して成長していく。


フレーム


シャイニーの親友。

自分の力を過信する時があるが、優しい天使。

心の中の炎をコントロールができず苦悩する。


ハーニー


シャイニーの名付け親でありハープ奏者。

いつも、シャイニーとフレームを気にかけている。

優しく温かい天使。

ラフィ


子供の天使達の教師であり、世話係。

明朗で優しく、癒しの天使でもある。

サビィをからかう事がよくある。

明るい表情の裏で深い悲しみを抱えている。

サビィ


天使の国をまとめている天使長。

美しい天使で、誰もが彼を見ると目が離せなくなる。

果樹マレンジュリをこよなく愛し、この果樹を利用した紅茶やお菓子などを開発する事に喜びを感じている。

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