安宅住吉神社

文字数 1,004文字

 看板に従って運転していくと安宅の関に着いた。あっという間だった。小松空港は帰省のために度々使っていたのに、どうして今まで来ていなかったのだろうというくらい近かった。

 はじめは何もないところに石碑がぽつんとある状態を想像していた。関所跡の『跡』が私にそういう想像をさせた。しかし、ちゃんと駐車場があった。無料で停められ、運転技術のない私でもなんとかなる広さがあった。
 車を停め外に出る。小雨がぱらついていたので、車に常備してあるビニール傘を出した。
 関所跡には安宅住吉神社があった。だから、駐車場もしっかりしていたようだ。もしかすると逆で、神社があったから関所ができたのかもしれない。

 思っていたよりも綺麗だった。もっと苔むした石像があったりするような、人外なおどろおどろした雰囲気を想像していたが、神社があったためか空気が清浄な感じがした。

 また看板があって『安宅の関』と書いてあるのだが、神社の方が手前にあるようだった。神社の奥に矢印があってそこに関所跡と書いてあった。関所跡なのか神社なのかと少し混乱した。

 神社までの参道は木が生い茂っていて、雨で空気に元気があって、いい感じがした。でもややきつめの坂道だった。坂道は苦手だ。がんばって上り切り、鳥居をくぐった先に神社があった。

 手を洗ってお(やしろ)の方に行くと、巫女さんと神主さんが居た。お社の中には数人の参拝客らしき人たちもいた。団体客に見えたので、自分はマイペースにお参りしようと思っていると、ニコニコした神主さんが「どこから来んだい?」と聞いてきた。

 一瞬、なんと答えるべきか迷った。
 そこから車で30分もかからない場所に住んでいたけれど、観光客だと思ってもらいたかった。神主さんからいろいろなお話を聞きたかったからだ。
 遠くから来た観光客なら、至れり尽せりに説明してくれるかもしれないけど、それだと申し訳ない気もする。かといって、正直に今住んでいる場所を言えば、近場だからと説明してくれないかもしれない。そんなことを考えてしまった。

 とりあえず
「大学に通っていて、近くに住んでいます」と答えた。
 生まれながらの地元民ではないことを表現したかった。今思うと、よく分からない日本語だった。

 けれど神主さんは、
「関所の話を聞いていくか?」と笑顔で言ってくれたので、いちもにもなく「はい!」と答えた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み