第2話

文字数 697文字

 C地区から再び連絡が入った。
「D地区よりライオン伯爵の目撃情報! 対象は現在、再びC地区に移動している模様です! 迎撃を開始します!」
 ライオン伯爵は神出鬼没だ。A地区に現れたと思ったら次の瞬間には何百キロも離れたZ地区に出現するという具合に。このところの研究ではライオン伯爵は複数存在するのではないかと言われている。
 ライオン伯爵の姿は十五歳以下の人間にしか見えない。触れることさえも出来ない。子供が作った道具でしか彼に攻撃を加えることも叶わない。茶色のコートを身にまとい、深々とフードを被り、その中に覗くのはオスのライオンの大きな顔だ。いつしか子供たちの間で彼の風貌からライオン伯爵と呼ぶようになり、やがてそれが定着した。ライオン伯爵の目的は何なのか未だに判然とはしないが、その被害は深刻になっている。彼らは世界中で十五歳以下の子供を次々とコートの中に取り込んでは消し去っているのだ。消えた子供がどこに行ってしまうのか分からない。彼らの養分になったという説もある。または、どこか異世界へと運ばれたというものある。だが、どの説にしろ、一度いなくなった子供は二度と帰らない。
 そうして大人では何も手出しが出来ないため、ライオン伯爵における被害を食い止めるために十五歳以下の子供だけの組織が世界中に作られた。危険な任務のため、社会では賛否両論の議論が繰り返されている。入隊は強制でも義務でもない。それでも入隊が絶えないのは各国の家庭の経済状況によるところが大きい。組織に加入すれば謝礼金と、任務を終えるまで相応の手当てが支払われる。そのため多くは貧しい家の出の子供たちが入隊することになるのだ。
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