第16話 モルネコ
文字数 1,709文字
…まあ、映画見たあたりからか。完全にお前が言いそうな事言ってたからな。
あいつが連絡してこないとか異常に胸がない事とかも違和感はあったけどな。
何を言ってるんだ……まあ、ちょろ可愛かったから俺は好きだが。
お前いつもあんな感じで男と始めるのか?
そうか……。乗り気だった所を悪いな。
好きな子とする時の為に童貞を捨てる訳にはいかない。だから応えられない。
ペラペラ喋っているけど本当に悪いのは欲求不満で友達とやろうとした俺だった。
女装してると我を忘れすぎてやらかしちゃうの、絶対女装あるあるだと思っている。
こいつが思いっきり笑ってくれたおかげで萎えてしまったから過ちにならなくてそこは感謝している。
え、まさか本当に俺とシたかったのか?
ああ。……まあ、考えてみれば女を好きになった事はないし男もイケるのかもしれないな。
何かどっちでもイケるタイプな気がしてきた。好きになった相手なら性別関係ないんじゃないか。
……というか、確か前自分はネコじゃないとか言ってなかったか?あれはもう信じられなくなったぞ。
へえ、内訳はネコ7、タチ3か?お前……いや、何でもない。
弱みを握られたも同然の俺はニヤニヤとしているこいつを睨みつけるしかなかった。
あの時素だったから格好良くありたかったし見栄を張って言った事を今まで忘れていた。
両刀の場合比率盛っちゃうの、ゲイあるあるだと思う。
変な汗かいたし、腹は膨れたし、いい感じに酔いも回ってきたし眠くなってきた。
それはいいが……何だその言葉遣いと呼び方は。改めて使われると鳥肌立ったぞ。
榊はそう言ってぶるりと身震いした。片付けていた食器を危うく落としそうになっていた。
お姉さんっていうかオネエさんだがな。
ふふっ…。ああ、風呂はそこな。一緒に入るか?みきさん。
ふははは、お前……チョロすぎだろ、冗談に決まっている。
みきさん、お姉さんキャラとチョロビッチは両立しないと思うぞ……。
何かボヤいていたが無視して風呂場に駆け込んだ。
脱衣所の全身鏡に映る自分を見ながら考える。
女装する時は気合を入れて当然下着も可愛いものを付けたくて、新しく買った女物の下着つけてたし、気付いたとしてもせめて服を脱がしてから暴露してくれてもいいんじゃないか?
決してあいつと一線を越えたかった訳じゃないし今考えたら絶対ないし無理だけどもう少し女の子の気持ち味合わせてくれてもいいじゃんか、と。
マジックミラーになってるガラス張りの窓に、ジャグジー付きの泡風呂。
これにシャンパンとか持ち込んだらもう完璧全女子が憧れるシチュエーションである。
ていうかあいつ、何でこんないい部屋住んでんだ。
交際経験なしの童貞のスペックじゃない。
友達にエロい感情抱くとか流石になさすぎて、考えれば考えるほどため息しか出なかった。