-月曜日、鳥の王の誕生(2)-

文字数 647文字

 鳥の王は帰宅するとこれで良かったのかと自問した。
 これで自分はもう人間ではない、鳥の王そのものになった、メフィストフェレスの言ったとおりだ。
 そしてこれからも何事もなかったかのように生きていくのだろう、見かけは人間として。
 約束の七日間は過ぎ、これで世界の輪も完成した。
 だが何故か鳥の王にはわだかまりがありそれを吐き出したくて仕方なかった。
 猛を懐柔することには成功したし、結果、田中優奈は大怪我を負った。
 すべて思い通りだ。
 眞琴は色々感づいているだろうが行動には起こさないだろう。

 急に不安になった鳥の王は彼の神を呼んだ。

「メフィスト! メフィストフェレス! いるのだろう出てこい」

 だが静寂だけがそこにはあった。四畳半の自室で鳥の王はもはや人間ですらない鳥の王は悪魔さえも救済の対象としないことを知った。
 なぜなら自分は神なのだから。
 破壊した世界を作り直すのは容易なことではない、鳥の王には漠々とした不安のみが目の前に広がっていた。
 世界を破壊することは簡単だ、だがその先の在り様を考えなければならぬ、それが神だ。
 そしてマスクのまま呟いた。
 鳥の王は帰宅するもマスクを一度たりとも外してはいなかった。

「相模原の山中に分校などない」

 そう、総ては神の生み出した虚像にすぎなかった。

「明日なんて来なくていい」

 それは彼が生み出すものだから。

「明日なんて来るな」

 なぜなら自らの創造に責任が持てないから。

「永久に今日のままでいろ、神が命じたんだぞ!」
 
 果たしてシムルグの時は止まった。
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