第20話 人口呼吸の子

文字数 890文字


 僕が18歳になった年のこと。
 親父に勧められて、車の免許を取ることになった。

 何度もミスを起こしては補講を受けていたが、年末ごろには仮免許をゲットして。
 実技試験が終われば、あとの勉強は学校が用意したおまけの授業みたいなものだ。

 何千万円もするコンピューターを使用して、事故を避けるトレーニング。
 RV車の宣伝。それから事故が起きたときに学んでおく、人命救助の講習。

 二人一組で、マネキンを使用し実際に、唇を重ねて息を吹き込むのだ。
 一定量、息を吹きこむとマネキンの胸が光る仕組みだったと思う。


 僕は高校の入学式で出会った女子高生。
 桃山(ももやま) 処女子(しょじょこ)さんのことが気になっていた。
 そして、あちらも僕が気になって仕方がないのだろう。

 だってこれ見よがしに、僕にヒップを見せつけるのだから。
 わざわざ僕の前を歩いては、腰を振る……。

 仕方ないから、免許を取って、車を買おう。
 そして、デートに誘い出し、カーおせっせしようと考えていた。
 だからこんな勉強なんて、どうでもいいと鼻をほじっている。

 僕とペアを組んだのは、真面目そうな男の子だった。
 彼がマネキン君に「ブーッ!」と息を吹き込んでいる間、僕はマネキンの胸を両手で押す。
 餅つきのように、ペアで繰り返すのだ。
 何が楽しくて、野郎の接吻を見なきゃならないんだ……そう思っていた瞬間だった。

 反対側にいる女の子チームが目に入る。
 いや、正しく表現するなら、ひとり女の子……の下半身だ。
 当時はギャル全盛期、大人しい女の子でも、ミニスカと厚底ブーツが流行っていた。

 たぶん、この子はそんなにギャルではないと思う。
 講師のおじさんが、事前に「人命救助の講習だから、女性は露出を控えてください」と伝えていたのに。
 うっかり忘れていたのだろう。
 それに見せパンとかで、対策しているのだろうと思ったが。

 この子は完全に見せるパンティーではない!
 ピンク色だっ!

 それからの僕は、興奮してしまい、マネキン君が骨折するぐらい胸を圧迫してしまった。


 数か月後、無事に免許を取得した僕は決意した。
 早く車を買って、桃山さんとカーおせっせをしようと……。
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