第12話:範子の大学受験と加藤との出会い

文字数 1,717文字

 人間は、いくら勉強が出来ても賢くても、心の醜い人が、その智惠を悪用すると太平洋戦争のような大きな戦争になるんだ。一番重要な事は、世のため、人のために、持っている知識をどう利用するかと言う事が一番大切。これが基本だと、力説すると、加藤さんってすごい、その通りだと思うわと範子さんと加藤さんが意気投合した。

 それを見ていた竜二も範子さんの素晴らしさを再認識して絶対にこの娘と結婚するんだと強く決意を固めた。そして16時近くになり今日は美しい横笛や良い話を聞かせていただきありがとうございますと範子が言った。竜二もお礼を言って、帰る時、仲良くしろよ、学校出たら結婚しろよと大きな声で加藤が言って、送り出してくれた。

 帰りの車中、竜二が、範子さんにボソッと学校出たら結婚しようなと告げた。すると範子は下を向いてボロボロ泣き始めた。うれしい本当にうれしい。絶対に私、竜二さんのお嫁さんになると言ってくれた。そして彼女の家に送り届けて、竜二は家に帰っていった。12月22日に竜二は、範子さんに電話して2人きりでクリスマスパーティーをやらないかと誘った。

 12月24日、14時に彼女の家に迎えに行くと連絡。迎えに行き、橋本の商店街へ行き、クリスマスケーキとコーラ、鳥の丸焼きを買って、竜二の離れの家に着いた。既に、16時過ぎで、暗くなり始めた頃、コタツの上に食べ物を置きクリスマスパーティーの準備が出来た。次に、ケーキにローソクを立て火をつけて灯りを消して2人で一気に吹き消した。

 そしてコタツに入りながらコーラで乾杯。しばらく話をしてからロウソクの炎は消えたが、2人の心の炎は燃え上がり、じっくりと床を一緒にして、しばらくの間、愛を確かめ合った。そして、来年、大学合格するまで会わない様にしようと言った。その後、18時過ぎ、竜二は範子さんを家に送り届け、家に帰ってきた。やがて1960年が終わり1970年を迎えた。

 1970年は、雪の多い年だった。竜二は初詣でに行き、範子の大学合格祈願をした。その後、仕事に打ち込んで1月が過ぎ、2月、3月、3月19日に範子から電話が入り、東京都立大学英文科と上智大学英文科の両方合格でき上智に行く事に決めたと連絡があった。そして、この話を加藤さんに連絡すると、まるで自分の事のように喜んでくれた。

 そして3月に合格祝いをするから連れてこいと言われた。範子さんにこの話を伝えると喜んでくれ、3月24日に行く事にした。この頃、やっと暖かくなり10時頃に範子の家に迎えに行き11時過ぎに藤野の加藤さんの家を訪ねるた。すると、ケーキと寿司が買ってあり、大きな、お頭付きの鯛がテーブルの上の大皿にのっていた。

 そして、早速、鯛の身に、範子が、ナイフを入れ、写真を撮り、身をほぐして皿に、とりわけ、残った頭と骨を大きな鍋に入れて煮だした。コーラとジュースでグラスに注ぎ、好恵さんの合格に乾杯した。その後、切り分けたケーキをいただき、寿司をつまみ始めると部屋に鯛の良い香りがして、加藤さんが味付けして、味噌汁茶碗に取り分けてくれた。

 すると加藤さんが範子さんに一言もらいたいなと言うと、範子が立って、お陰様で、東京都立大学英文科と上智大学英文科、両方受かって大変うれしいですと語った。一呼吸、置いたかと、思うと、こみ上げるものを抑えきれなくなり、みんなに、こんなに優しくしてもらい、私は本当に幸せ者ですと言い泣き出した。

 このご恩の報いるために上智大学英文科でも頑張って上位者になり英語では負けない人間になります。そして、その英語力で、素晴らしい洋画や音楽など多くの情報を世のため人のために生かしたいと思いますと言い切った。それを静かに聞いていた加藤が偉いと一言、言ったかと思うと涙を流した。ごめん、こんな、おめでたい席で泣くなんてと謝った。

 実はね、僕も、十年以上前、努力して、東大に合格して有頂天になって世の中なんて,たいしたことない,うまい事やって大金を稼ごうと思って入学した。しかし2年目の5月に体調を崩して、病院に行くと、結核で隔離病棟に入院と言われ、1ケ月が過ぎ、3ヶ月が過ぎても、いっこうに良くならなかった。
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