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文字数 558文字

 翌日、雅彦は落ち着きがなく、工場で扱う機械のチェックを見逃した。隣りにいた秋元が指摘し、チェックをやり直した。作業でもミスが目立ち、慌てて対処する事態が何度もあった。
 休憩時間になった。
 雅彦は外に出て、自販機で缶コーヒーを買って飲んだ。
 秋元は雅彦に近づいた。「気分でも悪いか」
「早く帰りたいだけだ」缶コーヒーを一気に飲んでゴミ箱に捨てた。
 秋元は笑った。「誰だって仕事は嫌だからな、気を抜かずにやれよ」
 雅彦は気分が浮かないまま、工場に戻った。仕事をこなしていくうちに震えは止まったが、終始落ち着きがなかった。
 仕事を終えると普段より早く着替え、早足で工場から去った。
 住居に戻ると即座に書斎に入り、机に向かった。興奮で震える腕で子供達の指摘を書いたメモを取り、子供達に見せたデザインを発展した絵を描き上げた。
 洋介は雅彦がキッチンにいないのに気づき、書斎に向かった。
 雅彦は暗い部屋で照明のついた机から離れず、絵を書き続けていた。
 洋介は書斎の電灯を点けて洋介は雅彦に近づき、肩を軽くたたいた。
 雅彦の集中力が切れた。雅彦は驚いて後ろを向いた。
「父さん、夜だよ」
 雅彦は窓を見た。外は真っ暗になっていた。内側から来る充実感を開放しながら立ち上がり、机の照明を消して部屋を出た。
 洋介は雅彦に続いて書斎を出た。
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