第14話 ハハカエルッ!?
文字数 2,221文字
水曜日は純と一緒に客先から直接自宅に帰った。
お昼はスーパーのサンドイッチで軽く済ませ、俺はテレワーク、純には午前中できなかった学校の勉強をさせた。
夜ご飯は冷凍うどんと、割るだけの出し汁、そしてネギとスーパーのお惣菜で天ぷらうどん。
その後は炊事に洗濯に掃除と家事のフルコース。
翌日優紀子が帰ってきたときに、いきなり家事をしなくてもよいよう、トイレなどの水回りも含めて念入りに掃除した。
新島の言うように、家事と仕事のパラレル作業は大変だが、少しはできるようになってきた、、、気もする。
夜は絵本を読んでやり、純もいつものようにすぐ就寝。
なんとか優紀子不在の水曜日を乗り越えられた。
***
木曜日の朝、純は「今日は1限目から行けるよ」と言って、すんなり1限目から学校に通えた。
学校に行ける日と行けない日の違いがまだわからないが、昨日客先でたくさん遊んでもらったことや、今日優紀子が退院することで、純の心の中の陽のエネルギーが溜まっていたのかもしれない。
純がどういったときに学校に行けるのかなど、詳細に記録していくのが大事と思い、最近あったことはすぐにスマホにメモをするようになった。
純がすんなり登校できたおかげで俺も朝から会社に行き、午前中は打ち合わせやプロジェクトへの指示であっと今に過ぎ去った。
お昼すぎ、早帰りで優紀子の病院に迎えに行く。
日曜日以来となる優紀子だが、本当に元気になっていた。
顔色も随分前に戻っている。
本人曰く80%ぐらいは回復したとのことだった。
先生と看護師さんにお礼を言って病院を後にした。
「出産以外で、生まれて初めての体調不良による入院だったけど、純が生まれてから初めてゆっくり休めた気がする。」
優紀子は助手席で心の底からの感想のように、しみじみ言った。
「そうか。お母さんになると休日でもまるまる休めることはないしな。俺も手伝ったりしなかったし。今度からもう少し家事やるよ。」
「ううん。あなたこそ本当にありがとうね。忙しい中、家事や純の面倒見てくれて。」
「新島にも言われたが、こんなときだが家事や育児の大変さを少しでも感じることができてよかったよ。」
「まぁ私は新島さんと違って、専業主婦だけど、ね。」
少しだけ寂しそうな口調で優紀子は言った。
「話は変わるが、差し入れたHSCの本は読めたか?」
「あの本、全部読んだわ。確かに純は発達障害というよりも、HSCの気質の可能性が高そう。あの本に純の気持ちを理解するためのヒントがたくさん載っていたと思う。」
「俺もそう思ったよ。共感しすぎる点や、怒られることに対して怖がりすぎる点なんか特にな。今まで人見知りな性格だけだと思っていたけど、HSC固有の特性の可能性が高い気がした。」
「今日は朝から行けているのね。」
「ああ。月曜日は3限目から行けて、火曜日は朝から登校。水曜日は行けなくて、今日は行けているよ。月曜日は図工が好きとかあるみたいだし、なにか法則があるかもしれない。」
「なるほどね。」
「優紀子も病み上がりだし、明日は学校は行けるとよいのだが。」
「私は大丈夫。ゆっくり休ませて貰ったし。」
「ぶり返すのが一番怖い。しばらくはおとなしく休んでいろよ。夕ご飯もスーパーでお弁当か何か出来合いのものを買って帰ろう。」
「では退院祝いということで、ありがたく甘えさせていただくわ。」
車を家の近くのイオンに止め、純にはスーパーのお惣菜のデミグラスハンバーグ弁当、俺と優紀子用には地元・芝寿しの「金沢日記」というお弁当、そして食後のデザートにプリンを買った。
その後優紀子が図書館に寄りたいということで、二人で図書館に行った。
平日の図書館は驚くぐらいに空いている。
今までは純に読む絵本を借りることが多かったが、今日は二人共、HSCなどの不登校や発達障害に関する本を借りた。
書店と同じように多くの本が並ぶということは、これらの問題が一般的でどの家庭にでも起こりうることだと明示しているようだ。
***
「あれ?思ったより片付いている」
優紀子のセリフに思わずほくそ笑んだ。
昨日頑張って家事をした甲斐があったってもんだ。
「けど、生ゴミ今日だったけど捨て忘れている。」
と笑われた。
月曜日は覚えていてゴミを捨てられたのだが、今日の木曜日は出し忘れていた。
「やっぱり自分の家が一番落ち着くわね。」
部屋着に着替えて、優紀子はソファで寛ぎながら言った。
寛ぎながらも何度も時計を見ている。そろそろ純が帰ってくる時間だ。
ピンポーンと家のチャイムが鳴った。
優紀子が急いで玄関を開けると、純が優紀子に飛び込んできた。
「お母さーん!」
純は優紀子にガシッとしがみついてわんわんと泣いている。
「心配かけて、ごめんね。」
優紀子も純を抱きしめながら、泣いている。
7年間片時も離れたことのなかった母と子が、1週間ぶりに家で会ったのだ。
そして純の涙には、家に母が帰ってきた嬉しさと、恐らく今日学校で怖かったことの悲しさとが入り混じっている気がした。
優紀子は繰り返し純の頭を撫でている。
二人はずっと玄関で泣いていた。
二人の抱き合う姿を見ると、俺も少し目が潤んだ。
***
夜は買ってきたお弁当を3人でゆっくり食べた。
純も優紀子も会えなかった分を取り戻すかのように沢山おしゃべりをしている。
デザートにプリンも食べて、純も満足したようだ。
親子三人の時間はゆっくりと更けていった。
今日の絵本の読む役目は優紀子に任せ、俺は午後できなかった分の仕事に専念した。
お昼はスーパーのサンドイッチで軽く済ませ、俺はテレワーク、純には午前中できなかった学校の勉強をさせた。
夜ご飯は冷凍うどんと、割るだけの出し汁、そしてネギとスーパーのお惣菜で天ぷらうどん。
その後は炊事に洗濯に掃除と家事のフルコース。
翌日優紀子が帰ってきたときに、いきなり家事をしなくてもよいよう、トイレなどの水回りも含めて念入りに掃除した。
新島の言うように、家事と仕事のパラレル作業は大変だが、少しはできるようになってきた、、、気もする。
夜は絵本を読んでやり、純もいつものようにすぐ就寝。
なんとか優紀子不在の水曜日を乗り越えられた。
***
木曜日の朝、純は「今日は1限目から行けるよ」と言って、すんなり1限目から学校に通えた。
学校に行ける日と行けない日の違いがまだわからないが、昨日客先でたくさん遊んでもらったことや、今日優紀子が退院することで、純の心の中の陽のエネルギーが溜まっていたのかもしれない。
純がどういったときに学校に行けるのかなど、詳細に記録していくのが大事と思い、最近あったことはすぐにスマホにメモをするようになった。
純がすんなり登校できたおかげで俺も朝から会社に行き、午前中は打ち合わせやプロジェクトへの指示であっと今に過ぎ去った。
お昼すぎ、早帰りで優紀子の病院に迎えに行く。
日曜日以来となる優紀子だが、本当に元気になっていた。
顔色も随分前に戻っている。
本人曰く80%ぐらいは回復したとのことだった。
先生と看護師さんにお礼を言って病院を後にした。
「出産以外で、生まれて初めての体調不良による入院だったけど、純が生まれてから初めてゆっくり休めた気がする。」
優紀子は助手席で心の底からの感想のように、しみじみ言った。
「そうか。お母さんになると休日でもまるまる休めることはないしな。俺も手伝ったりしなかったし。今度からもう少し家事やるよ。」
「ううん。あなたこそ本当にありがとうね。忙しい中、家事や純の面倒見てくれて。」
「新島にも言われたが、こんなときだが家事や育児の大変さを少しでも感じることができてよかったよ。」
「まぁ私は新島さんと違って、専業主婦だけど、ね。」
少しだけ寂しそうな口調で優紀子は言った。
「話は変わるが、差し入れたHSCの本は読めたか?」
「あの本、全部読んだわ。確かに純は発達障害というよりも、HSCの気質の可能性が高そう。あの本に純の気持ちを理解するためのヒントがたくさん載っていたと思う。」
「俺もそう思ったよ。共感しすぎる点や、怒られることに対して怖がりすぎる点なんか特にな。今まで人見知りな性格だけだと思っていたけど、HSC固有の特性の可能性が高い気がした。」
「今日は朝から行けているのね。」
「ああ。月曜日は3限目から行けて、火曜日は朝から登校。水曜日は行けなくて、今日は行けているよ。月曜日は図工が好きとかあるみたいだし、なにか法則があるかもしれない。」
「なるほどね。」
「優紀子も病み上がりだし、明日は学校は行けるとよいのだが。」
「私は大丈夫。ゆっくり休ませて貰ったし。」
「ぶり返すのが一番怖い。しばらくはおとなしく休んでいろよ。夕ご飯もスーパーでお弁当か何か出来合いのものを買って帰ろう。」
「では退院祝いということで、ありがたく甘えさせていただくわ。」
車を家の近くのイオンに止め、純にはスーパーのお惣菜のデミグラスハンバーグ弁当、俺と優紀子用には地元・芝寿しの「金沢日記」というお弁当、そして食後のデザートにプリンを買った。
その後優紀子が図書館に寄りたいということで、二人で図書館に行った。
平日の図書館は驚くぐらいに空いている。
今までは純に読む絵本を借りることが多かったが、今日は二人共、HSCなどの不登校や発達障害に関する本を借りた。
書店と同じように多くの本が並ぶということは、これらの問題が一般的でどの家庭にでも起こりうることだと明示しているようだ。
***
「あれ?思ったより片付いている」
優紀子のセリフに思わずほくそ笑んだ。
昨日頑張って家事をした甲斐があったってもんだ。
「けど、生ゴミ今日だったけど捨て忘れている。」
と笑われた。
月曜日は覚えていてゴミを捨てられたのだが、今日の木曜日は出し忘れていた。
「やっぱり自分の家が一番落ち着くわね。」
部屋着に着替えて、優紀子はソファで寛ぎながら言った。
寛ぎながらも何度も時計を見ている。そろそろ純が帰ってくる時間だ。
ピンポーンと家のチャイムが鳴った。
優紀子が急いで玄関を開けると、純が優紀子に飛び込んできた。
「お母さーん!」
純は優紀子にガシッとしがみついてわんわんと泣いている。
「心配かけて、ごめんね。」
優紀子も純を抱きしめながら、泣いている。
7年間片時も離れたことのなかった母と子が、1週間ぶりに家で会ったのだ。
そして純の涙には、家に母が帰ってきた嬉しさと、恐らく今日学校で怖かったことの悲しさとが入り混じっている気がした。
優紀子は繰り返し純の頭を撫でている。
二人はずっと玄関で泣いていた。
二人の抱き合う姿を見ると、俺も少し目が潤んだ。
***
夜は買ってきたお弁当を3人でゆっくり食べた。
純も優紀子も会えなかった分を取り戻すかのように沢山おしゃべりをしている。
デザートにプリンも食べて、純も満足したようだ。
親子三人の時間はゆっくりと更けていった。
今日の絵本の読む役目は優紀子に任せ、俺は午後できなかった分の仕事に専念した。