文字数 416文字

救急救命医の氏名を問う言葉に対して、男は”さいとう”と名乗った。
それからバイタルをチェックが行われた。
心拍、呼吸とも、正常範囲、血圧も正常範囲。
体温をチェックしていたスタッフが、体温は36度5分と報告した。
外傷の有無を調べていたスタッフが、かすり傷ひとつないことを報告した。
腕をつねると、男は腕を少し引っ込めた。
足をつねりと、男は足を少しずらした。
ペンライトを取り出して男の瞳にあてると、瞳孔が収縮した。
頭痛以外の痛みを感じるかと問うと小さい声で、いえ、と男は返答した。
さらに院内電話を取り出し、頭痛以外に症状の訴えがなかったか総合受付に問いかけていたが、
あらたな情報は得られなかったようだ。

救命救急医は腕組みして数秒間考えた。
全身CT撮影を依頼し、院内での移動を担当する看護師に意識レベルのチェックを注意した上で、
総合内科に連れていくよう指示した。
看護師の意外そうな表情に頷いて、詐病の疑いがあると申し送りするようにと付け加えた。
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