第35話 大好きだった女の子が入学してきた話【アイ・ペコ・カズヨ】

文字数 1,348文字

小島は高校2年生の時、幼馴染のペコちゃんと同じクラスになった。
お互い新しい友達も出来たので、普段話すことはなかったけれど、久しぶりにペコちゃんから話しかけてきたので、小島はペコちゃんに何かあったのかと緊張が走った。
小島にとってペコちゃんは単なる幼馴染ではない。
小島が中学生の時にいじめで全員に無視された際に、ペコちゃんだけは、みんなの目を盗んで小島に声をかけてくれた。
だからペコちゃんに何かあったときは、小島が動くつもりだった。
けれどペコちゃんから聞かされたのは、嬉しいニュースだった。

「昔さぁ、一緒に海に行ったの覚えてる?あのとき親戚で来てたアイがうちの高校入学してきたらしいよ。」
「マジで。覚えてるよ!でも俺の事を覚えてるかな(笑)」
なんて会話をした。
小島のなかで5年前の新潟の海へ行った旅行のことが鮮明に甦ってきた。
「綺麗な顔立ちしてた気がするから、今どんな風になってるんだろ?可愛くなってたらいいな!」と、まだ会ってもいないのにアイのことで頭がいっぱいになった。

どうやらアイは生活科に入学したとの情報を小島はつかんだ。
その科には中学時代の元カノのカズヨもいるので、そこら辺から当たってみるとした。
カズヨに連絡を取って聞いてみると、アイと最近仲良くなってよく一緒にいるとのことだったので、アイと会うセッティングを頼むと快く引き受けてくれた。
そして5年ぶりの再会は食堂近くの自動販売機の前で実現した。

久しぶりに会うアイはメガネをかけていて、小島が思っていたより地味な感じだったけれど、メガネを外すとやっぱり綺麗な顔立ちをしていた。
アイも一緒に海に行ったことを覚えていて、久しぶりとは思えないほど話が弾んだ。
それから廊下ですれ違った時は軽く話をしたり、アイが遠くから小島を見つけると手を振ったりといった関係がしばらく続いた
小島はアイをすでに好きになっていた。
けれど告白は早い気がしたし、何よりアイの気持ちが全くわからなかった。

それからしばらくして小島は、友達から「他校の女の子と合コンをやるから、お前も来いよ」と誘われた。
小島は断ったけど、「お前いないと盛り上がらない」としつこく誘われたので結局参加することになった。
小島が遅れて参加すると、みんなかなり出来上がっていてすでにベロベロだった。
小島はとりあえず来ていた女の子と話してみた。
すると、その子はアイと同じ中学で親友との事だった。
「来てよかった~♪」と小島は心から思った。
ところが、その子からアイの情報を得ようと聞き込みをしていると、「最近、アイが好きな人出来たって言ってた」とショッキングな情報を得てしまう。
小島はずいぶん動揺した。
その様子を周りが気付いて「どうした?」と聞いてくるので小島は事情を説明した。
すると小島の友達は面白がって「もしかしたら好きな人ってお前かもしれないじゃん!」と言い出して確かめようという流れになった。
それからアイの親友という子が、アイの家に電話をかけた。
根掘り葉掘り聞いた後、その子は「アーン、わかったぁ!じゃあまたあとでね!」と電話を切った。
そして、その女の子はこう言った。
「好きな人の名前聞いたよ!野球部の小島って人だって!」
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