0003 彼女からの「刻印」、そしてさらにヤバい雰囲気に……

文字数 824文字

「むぐっ!?」
 
 鈴木理子(すずき りこ)はいきなり俺にキスをした。

「んっ……」

 柔らけぇ……

 そしてこの弾力……

 ああ、ヤバ……

 俺のファースト・キスが、こいつと?

 マジですか?

 幸せすぎるんですけど。

 てか、胸、当たってるし。

 やっぱ、でけぇ……

 こっちも弾力、すご……

「ぷはっ……」

 鈴木理子はひとしきり唇を重ねたあと、俺に回していた腕をそっと放した。

 彼女はじっと俺をにらんでいる。

「あの、鈴木、これって、どういう……」

「勘違いしないでください、鬼神(おにがみ)くん。これは『刻印』なんです」

「はへ? こくいん……」

「あなたの命は必ずわたしがもらう、その決意の表明というわけです。どうぞ、よろしくお願いいたします」

「はあ……」

 何が「よろしく」なんだか……

 ま、とにかくあこがれの鈴木とキスできたのはハッピーだ。

 できれば続きもしたいけど……

「ヘンなこと考えてますね?」

「えっ?」

「みんなそうです、男なんて」

「ああ……」

 いや、こんなことされて考えるなってほうが無理だろ?

 ただでさえそんなエロいかっこうしてるクセにさ。

 なんじに問えって感じじゃね?

「お前ら、そろそろいいか?」

 刀子冬真(かたなご とうま)がけだるそうに言った。

「鬼神くん、もうこれまでの世界に戻れるとは思わないでくださいね?」

 鈴木が俺の手を引っ張った。

「いてて……」

 華奢なのになんて力だよ。

 こいついったい、何者なんだ?

「さあ、行くぞ」

 刀子の先導で、俺はこれからどこかに連れていかれるようだ。

 ちょっと、この雰囲気、なんかヤバいって……

「待ちな、お前ら」

 後ろから野太い声が響きわたった。

「――っ!?」

 鈴木と刀子はそちらを振り返り、にらみをきかす。

 2メートルはありそうなスウェットの大男が仁王立ちしている。

 パンパンに膨らんだ風船みたいなすごい体つきで、その顔はニヤニヤとしている。

「プロレス部のエース、兵頭竜一(ひょうどう りゅういち)か。なんの用だ?」

 刀子は兵頭をにらみながら言った。

「鈴木、ツラ貸せ」

 兵頭は彼女にそう告げた。
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