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時計の針を巻き戻し、再び黎明期から「ケータイ小説」を語らせてもらう。


前述したように黎明期のケータイ小説は、主に「ギャル」と呼ばれる人種が中心となって率直な心情をネット上に叩き込んだ結果、多くの若者の「共感」を得た。


「大人達が何を言おうが、自分達はこの物語に感動している!」


そんな強さと熱さが、当時の若者からひしひしと伝わってきていたのを、筆者は今でも記憶している。


もちろん、全ての若者がそうではなく、当時のケータイ小説で主流であった「悲恋要素」に眉をひそめたり、大人達に迎合するような若者も確かにいた。


が、大多数の若者は「次の物語」を求めてサイトに足を運んだり、出版されていくケータイ小説をコレクションのように集めていたのだ。


そして、ケータイ小説は第二段階に入る。


「ケータイ小説」から、「ケータイ小説」を学んだ世代。

いわゆる、第二世代が「ケータイ小説」を書き始めたのだ。


しかし、第二世代は黎明期の「ケータイ小説家」とは違い、基本語るべき過去を持ち合わせていない。

そして、いかに感動的とはいえ、凄惨な昔話の吐露に食傷気味になってきたケータイ小説のシーンにおいて、第二世代は自ら頭をひねる事で「物語」を紡ぎ出さなければならなかった。


これは、初期のケータイ小説家が過去を振り返る事のみで支持を得て、「物語」を作り出す能力を必要としなかったのとは対照的な動きであろう。

(もっとも、語るべき過去が無くなれば、黎明期の作家も必然的に物語を作り出す事を余儀なくされたのだが)


が、ゼロから物語を紡ぎ出す、という行為は並大抵の事ではない。


プロのクリエイターでも、世に出ていない「新しいモノ」を作り出す為に、常にネタやパターンを探し求めている状況であるのに、語るべき過去もスキルもない素人であれば、紡ぎ出す物語は脆弱なモノになると言わざるを得ないだろう。


そんな時、その第二世代が執筆するにあたって大きな助けとなったモノ。

それが、自身が読者時代に大きな感銘を受けた「ケータイ小説」であったのだ。
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