(五・一)ICAのボス

文字数 1,374文字

(五部)マザーアース
 ※文中の『人類』は基本的にクローン人間、『旧人類』はわたしたちオリジナルの人類のことです。
(五・一)ICAのボス
 翌朝のニューヨークである。場所はマンハッタンのICA事務局ビル。
 ガードマンたちによるマザーに関する報告は、ビルのセキュリティー責任者パウチを通し、ICAのトップ、マザーが言う所のボスたちの耳に入った。ここでICA組織のトップ三人を、紹介しておこう。
・事務総長のジェームズ・チャイルドロス
・副事務総長のデビッド・フェラーロック
・旧人類管理担当事務局長のビル・ゲツイ

「もしかして、どなたかの御知り合いでは御座いませんか?」
 うやうやしく問うパウチに、しかし三人共かぶりを振った。
「知らんな」
「知らないねえ」
「知ってる訳ないだろ、そんな変なの!」
 最後の口が悪そうなのが、我等旧人類の滅亡をひたすら願うビル・ゲツイ様である。
「けど、気になるなあ。何者だ?」
「マザーアースのマザーねえ。そんな過激派とかNGOとか、あったっけ?」
「早速調べてみました。ですがそんな組織は、世界中何処にも見当たりません」
 忠実な僕であるパウチが答える。
「まあ大方、火星エデン計画にいちゃもん付ける、旧人類のちんけな過激派組織辺りなんじゃない?そこの目立ちたがりで碌に学校にも行かない、自称環境活動家の娘とかさ!」
「まあ、そんな所だろ」
「しかしセキュリティーを掻い潜って侵入したとか、姿が消えたとか、ちょっと穏やかじゃないな。そもそも、どうやって侵入したんだ、その娘?まさかガードマン共、さぼってた訳じゃないだろうね?パウチ君」
「いえいえ、決してそんなことは……。それが不思議な事に、赤外線カメラに残っていた映像を観ましてもですね。その娘なぜか忽然と、最上階の廊下に姿を現しているので御座います」
「まじか……」
 パウチの言葉に一同沈黙、腕を組み首を傾げた。しかし我等がゲツイ様によって、沈黙は直ぐに破られた。
「分かった!それ、もしかして忍者と言うやつじゃないか、日本の?」
 なぜかゲツイは、日本贔屓。なにしろ日本政府から、旭日大綬章を授与されている程。
「アジア系の娘だったんだろ?だったら、間違いない。日本の忍者の娘だ!」
「何だね、忍者とは?」
 そこで僕のパウチがご丁寧に、ジェームズとデビッドにレクチャーする。
「ええ、忍者と申しますのはですね……」
「成る程。では、そうかも知れんな」
 そこでゲツイは早速、ICA日本支部の事務局長Mr霧下に連絡。マザーアースとマザーなる少女について、至急調査するよう命を下した。同時に監視カメラに映ったマザーの映像も、Mr霧下に送付した。
「ま、兎に角!また来ると、言ってんだろ、そいつ?」
 確かめるゲツイに、パウチちゃんが頷く。
「はい、左様で御座います」
「ほなら、じっくり待ちましょうや、皆さん」
 ゲツイの言葉に一同、同意。パウチは警察に出動を要請し、厳戒態勢でマザーの再訪を待ち構えたのであった。

 一方、東京に在るICA日本支部のMr霧下は、突然の呼び出しに御機嫌斜め。
 一体何の騒ぎかと思えば、たかが小娘ひとりに大騒ぎ!こっちは夜中だってのに、緊急召集なんぞしやがって。ふわーっ、ねみい……。マザーアースのマザーだと?そんなの知るか。明日だ、明日!
 とっとと帰宅して、ベットに潜り込むMr霧下であった。
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