少女へ(海)

文字数 650文字

貝殻、足跡、波の音、
空の青さ、木漏れ陽、プラタナスの木陰、
夕映え、夕立、虹、
駅のホーム、街の灯り、花火、
星座、ラヴソング、風のにおい、
夜明けの静けさ……
目印はいくつもある、この星の上に

もしもきみが遠い国へ行って
誰もきみの行方を
知る者はいなくなっても
きみが残していったすべてのものが
やがてこの地上から
永遠に忘れ去られた後にも

ぼくは海の夕映えのきらめきの中で
潮風と遊ぶきみの笑い声と出会うんだ
きらきらと輝く波の中で
いつも寂しそうにしているぼくの背中を
叩いてゆく潮風にまじって
ぼくの耳元でくすぐるように笑うんだ

そしたらぼくは相変わらずだなって
つぶやいてみる
するとまわりの人は驚いて
へんな顔でぼくを見るだろう
だってもうきみは
この星の上には存在しないことに、
なっているからね

だけどこの宇宙の何処を探しても
こんなに青く澄んだ海は
多分この星にしかないのだから
だとしたらあんなに海が好きだったきみが
たとえ今宇宙の果てをさすらっていても
この大宇宙の何処を旅していたとしても
時にはこの海辺に
立ち寄ることもあるだろう

だからいつきみが
帰ってきてもいいように
ぼくはいつも
この星の上で待っているから


目印はいくつもある、この星の上に
きみとぼくが
大の仲良しだったことの証し
きみとぼくとが
寄り添って生きた目印は
いつまでもこの星の上に残っている
消え去ることなく
幾千の人々が生き続けるこの星の上に

目印はいくつもある、この星の上に
この星の上でぼくたちが
いつかまたやり直せるように
時を越え再びめぐり会えるように

目印はいくつもある、この星の上に
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み