セリフ詳細

「その時でございます、あっしは目を疑いやした……おりんちゃんの胸元から蛇が這い出したんでございます、だけど良く見るとその蛇には厚みと言うものがございやせん、まるで……そう、この腕の刺青のようでございました、金蔵も肝を潰したのでございましょう、蛇に刃物を突き立てやしたが、あべこべに蛇は刃物を伝わって金蔵の袖口から入り込むと首に巻き付いたのでございます、金蔵は引き剥がそうとしましたが、刺青を引き剥がせる道理もございやせん……妙な光景でございました、一見して締め上げていると言うような様子には見えないのでございます、まるで金蔵が一人でのた打ち回ってるだけのような……だけど金蔵の顔は見る見る土気色に変わりやして……正吉が刺し殺される所を見たばかりでございましたが、首を絞められて死ぬのはまた見苦しいものでございますな……ですが、不思議とむごたらしいとは思いやせんでした、金蔵は当たり前の報いを受けたんだと…………蛇は金蔵を絞め殺すとまた畳を這って、今度はおりんちゃんの着物の裾の中に消えて行きやした……それがあっしが見たものの全部でございやす……」

作品タイトル:おりん

エピソード名:おりん

作者名:ST  sansyouteitiraku

8|その他|完結|1話|9,378文字

江戸, 同心, 居酒屋, チャットノベル大賞, 怪奇

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江戸のはずれ内藤新宿。
そのまた外れの小さな煮売り居酒屋で……。