活動報告
「……私たちはコブレンを奪還したい。
それが不可能でも、自警団として存続する限りは市民を救援しなきゃいけない。守るものがないと、私たちは堕落して……ただの殺し屋に成り下がってしまうから」
(〈アースフィアの戦記〉月ニ憑カレタ歌語リ/二十六章 経綸ノ朽チ果ツ歌)
意志がなまくらになれば、知性が崩れ落ちる。
イスタル師は厳しかったけど、私たち門弟に恐怖を与えたことはなかった。
恐怖が統治の手段となった場所では意志と知性が損なわれる。
きっと、国家でも家庭でも同じだ。
師は幼い私に言った。
「聞きなさい、レミ。悪魔はときどき人に囁くの。人間どもの中から、個性も言葉の力も奪おう。他の奴らを支配しよう。子供や若者から始めよう――」
――自分が何をしたいのかはおろか、それが何のために必要なのかも考えず、大人から言われたことを我慢してやり続けることだけが努力だと考えるように仕向けよう。
――その努力が一番大切で、自分のしたいことをするのはどうでもいいことだと考えるように仕向けよう。
師は私をそんなふうに扱わなかった。だから、死体が転がる壊れた街に、今、立っていられる。
ねえ、聞いて。
死別は悲しいだけじゃないことを。
誰かを愛して、誰かのために戦うときに痛みを感じるのは自分を裂くからだ。
裂いて、誰かと共にいるためなんだ。
それができるなら、その誰かは、死んでもただ死んでいなくなったんじゃない。
ずっといるためにいなくなったの。
今夜斃れるさだめでも、私は信じる。
『〈アースフィアの戦記〉月ニ憑カレタ歌語リ』二十七章は12月7日(月)から公開開始だ。
私は最期まで抗う。
2020年 12月04日 (金) 20:53|コメント(0)
コメントはありません