3章 第5話 ルベルのファミリア

文字数 3,111文字

「今日こそ、けりをつけにきたぜ。星辰」
 アクイラが星辰に話かける。

「これって君がやったの?」
 星辰が周りにいる生徒たちを見渡しながら言った。

「まあな。ちょっと高かったが、地球人には効果はてきめんだな」
 アクイラが持っている機械を一度放り投げて、それを空中でパシッと受け取る。
 
「悪いが、今日こそ一緒に来てもらうぜ」

「やっぱり、妹さんが……」

「ふん。もう面倒だから、この際言ってやる。お前らの想像通りだよ」

「……僕も簡単には行けない。でも、何か……」
 
「手はあるんじゃないかってか? あるならやってるての。それとも何か策があるのか言ってみろ」

「それは……」
 言いよどむ星辰。

「そらみろ。世の中、そんな都合のよくは出来てないのさ。お坊ちゃん。恨みはないけどよ。このまま一緒に来てもらうぜ」

「おい」
 星辰とアクイラの話にルベルが割って入った。

「あん。なんだお前?」
 アクイラがルベルの方を向く。

「俺を無視して話を進めるな」
 ルベルが星辰の横くらいまで歩を進めながらアクイラに向かって言った。

「睡眠装置が効かないなんて、お前も宇宙人か? まあどっちでもいい。お前なんぞアウトオブ眼中だ。消えな」

「ふん」
 ルベルが顎に手をあて、アクイラじろじろと見た。

「なんだよ?」

「顔も悪くないし、体つきも思った以上にグラマラスだな……これで犯罪者じゃなかったら声をかけているところだ」

「急に、な、なにを言ってやがる!」
 アクイラの顔が赤くなる。

「そ、そうだよ。君、女の子に失礼じゃないか」
 星辰もルベルをたしなめた。

「何を言う。お前をさらい来ている犯罪者だぞ?」

「いや、それ関係ないと思う……」

「それにお前の様に女性に興味が無いみたいな顔しているのもおかしい」

「それも今言うこと!?」
 星辰がすっとんきょうな声をだす。

「まあ、女性に失礼な視線を向けたことは謝罪しよう」
 ルベルがアクイラに少しだけ頭を下げる。

「ふ、ふん。こいつも調子狂うな……。まあ邪魔するなら、お前からぶっ飛ばさせもらうぜ」
 アクイラが構える。

「星辰、邪魔だ。窓から外に出ていろ」
 ルベルが、持っているカバンを廊下に降ろしながら言った。

「でも……」

「良いから、ここは言う事を聞け」

「分かったよ。気をつけて」
 星辰はルベルに言われた通りに、近くの窓から外に出た。

「ふん。言われるまでもない」
 ルベルも戦闘の構えをとる。
 少しの間、アクイラとルベルは対峙した後、アクイラはルベルに飛び掛かった。
 
「はッ」
 アクイラは左足ルベルの顔面目掛けて足で払うように蹴った。
 ルベルはその蹴りを右手でガードするが、受けた衝撃で窓から外に出てしまう。

「ルベル!」
 星辰がルベルに向かって叫んだ。
 飛ばされたルベルは空中で体勢を整えるとゆっくりと校庭に降り立った。
 星辰がルベルに駆け寄る。

「ルベル、大丈夫?」
 星辰が心配そうにルベルに聞いた。

「ふん。問題ない」
 ルビルがぶっきらぼうに答える。
 その間にアクイラも校庭に出てきた。
 また、対峙する形となる。

「男を護るのは主義じゃないが、仕方ない。サモンファミリア」
 ルベルの腕が光って、その光が消えると腕にグローブが装着されルベルのファミリアが空間から現れた。
 ルベルのファミリアは鳥の形をしている。アルタイルが鷲だとするなら、こちらは白鳥の様だった。

「ファミリアか……。しょうがねえ、サモンファミリア」
 アクイラも同じようにグローブを装着し、アルタイルを召喚する。

「アルタイルが、復活してる?」
 星辰がアルタイルを見て少し驚いた様に言った。

「ファミリアは時間はかかるが自己再生するんだ。そもそも機械だし修理できるだろうが」
 ルベルが星辰に説明する。

「ああ、まあそうか……」
 星辰が納得した様に言った。

(姉さま)
 その時、アクイラの頭にのみ声が聞こえてきた。

(ウルラかどうした?)

(こっちのメイドなんだけど、やっぱりミュータントかブーステッドヒューマンかもね。こいつら睡眠装置の効き目が薄い)
 ウルラはその時、桜とシルビアと交戦していた。

(そうか。邪魔されないように念のため、お前を残したのは正解だったな。でも二対一で大丈夫か?)

(こいつら、量産型のファミリアしか持ってないみたいだから、スピカと私で何とか……でも、急いでほしいかな)

(分かった。少し待ってくれ……)

(うん)
 そう言うとウルラの声は消えた。

「少し、急がねえとな……」
 アクイラが二人を見据えながら言う。

「二対一は卑怯な気がするけど僕も……」
 星辰もファミリアを出そうとした。

「やめろ。お前の手はいらない」
 ファミリアを出そうとする星辰をルベルが止めた。

「でも……」

「お前の言った通り、二体一など気に入らん。それに足手まといだ。そこで見てろ!」
 ルベルは星辰にそう言うと、次はアクイラの方を向いた。

「アクイラ、お前を逮捕する。本来、女と戦うのは嫌だがこれも職務だ」

「お前、銀河連邦警察か?」

「そうだ。銀河連邦警察のルベル=ベラトール一等巡査だ」

「ふん、面白いじゃねえか。やれるもんならやってみな。行けアルタイル!」
 アクイラがアルタイルに命令をくだした。

「イエス。マスター」
 アルタイルがルベルのファミリアに襲い掛かる。相変わらず凄いスピードだ。

「デネブ。シャボンカッター」
 ルベルも自分のファミリアに命令をくだす。

「イエス。マスター」
 デネブと呼ばれたファミリアから複数のシャボン玉が発生した。

「シャボン玉?」
 星辰が戦闘の場に合わない、綺麗なシャボン玉を少し以外そうな目で見ている。

「なんだ、それ。大道芸か? ん? これは……」
 デネブが作った丸いシャボン玉が形状が変形して円盤状となり、アルタイルを襲う。
 だが、アルタイルがシャボン玉のカッターを避けると、そのままシャボン玉のカッターは正にシャボン玉の様に消えた。

「ちっ」
 アクイラが舌打ちをする。
 シャボン玉のカッターの攻撃は、かすっただけでもアルタイルの装甲を切り裂いた。

「たかが、シャボン玉とか甘くみるな。デネブ。シャボンブーメラン!」

「イエス。マスター」
 ルベルの命令を受けたデネブが再度シャボン玉を作り出した。
 そして、このシャボン玉も円盤状に変形してアルタイルを襲い始める。

「この!」
 アクイラがアルタイルを動かして、シャボン玉を避ける。

「まだまだ」
 しかし、避けたシャボン玉がブーメランの様に空中で曲がってアルタイルを再度襲う。

「ち、アルタイル。ファイア!」
 アクイラもアルタイルに新たな命令をくだす。
 するとアルタイルの周りに無数の炎の玉が出現した。

「あのシャボン玉に飛ばせ!」
 
「イエス。マスター」
 アクイラの命令で、炎の玉がシャボン玉に向かって飛んでいき接触した。炎とシャボン玉が接触した瞬間に爆発が起きた。

「なるほど、それがアルタイルの能力」

「そうだ」
 ルベルの言葉にアクイラは短く答えた。

(炎を使う能力……僕と戦った時には使ってなかった)
 星辰はアルタイルを見ながら、そう思った。アクイラはまだあの戦いでは、手の内のすべてを見せてなかった。

(炎か……。単純な能力ゆえに本来ならやっかいだが……)

(あのシャボン玉、どういう原理が知らんが硬くして飛ばしているらしいな)
 ルベルとアクイラは、互いのファミリアの能力を分析している。

「すごい、これが正真正銘のファミリア同士の戦いなんだ……」
 星辰が二人の戦いに固唾をのんで見守っていた。
 だが、その戦いを三人が気が付かないくらい遠くから見ているものがいた。
 ラートルである。

「面白いことになってるわね。少し様子を見ましょうか」
 ラートルはそう言うとフフ笑った。
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