第4話 抱擁
文字数 218文字
帰宅した僕はぐったりとソファに倒れ込んだ。
目を閉じて暫くすると、真っ赤にうねる派手なビジョンが浮かんできた。これはアイツのイメージだ。想像力だ。
僕は重い身体を起こすと、描き途中のキャンパスを引っ張り出した。薄い色彩、細い線で浮かない表情の少年と少女が描かれている。僕は引き出しからスプレー缶を取り出すと、思いっきり噴射した。
「うわ、煙い。」
呟いて思わず笑ってしまった。窓ガラスを開け放つ。灼熱の夏の匂いが、冷えた部屋を塗り潰していった。
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