第十二話

文字数 861文字

クロサキは鋭い爪を出すと、がっと猫和尚に飛び掛かった。
猫和尚が振り回した腕を潜り抜け、頭に飛び乗る。所構わずがりがりと爪で引っ掻いた。頭の皮に牙を立てる。
「痛てっ! 痛てて! やめろ!! このくそ猫!!」
血がたらたらと流れ落ちる。

猫和尚はクロサキを捕まえようとする。クロサキはタンと飛び降りる。後ろを振り向く猫和尚よりも早くその背中に駆け上がると耳に咬み付いた。
「うわあ。やめろ。離れろ!」
猫和尚は頭をぶんぶんと振る。クロサキの角がごつごつと頭にぶつかる。猫和尚は両手でクロサキを掴むとぎゅうぎゅうと引っ張る。耳の肉が伸びる。猫和尚はクロサキの後ろ脚を掴んだ。足を引き抜く勢いでクロサキを引っ張る。それでもクロサキは離れない。死んでも離れない覚悟だ。ぼきっと嫌な音がしてクロサキの後ろ脚が折れた。
「貴様―!!」
猫和尚はその足を思い切り引っ張った。耳が千切れた。猫和尚はクロサキの足を持って岩壁に叩き付けた。
「ぎゃっ!!」と悲鳴を上げたクロサキはどさりと地面に落ちた。
そのまま動かなくなった。
猫和尚は「ふう・・」と息を吐いた。

「けっ、死んじまったか。口程にもねえ奴だ。・・・・しかし、耳が痛てえ。このくそ猫、何しやがる、猫畜生のくせに」
猫和尚は耳を抑える。抑えた指の間からだらだらと血が流れる。
クロサキがよろよろと立ち上がった。
後ろ脚はだらりとぶら下がったままだ。クロサキはびっこを引きながらも角を猫和尚に向けて構えた。
「おや、死んでいなかったのか? この死に損ないが」
「ふん。俺は何でもねえぜ。いくらでも戦える。猫和尚、今度はその目だ。その目を角で突き刺してやる」
クロサキは言った。その口からは一筋の血が流れて糸を引いた。
「けっ、やれるもんならやってみろ!」
猫和尚は身構えて怒鳴った。
「その首を捻って、皮をはいで三味線屋に売り飛ばしてやる! 肉は焼き肉だぁ!」

クロサキはじりじりと間合いを詰めた。大きな声で猫和尚を威嚇する。耳を後ろに倒してふーっと唸る。口元から血が流れ落ちる。次の瞬間、猫和尚の顔を目がけてばっと飛んだ。

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