第7話 禁断の恋
文字数 2,564文字
人間と魔族は違うことが多い。
まず魔法が使えるか使えないかの問題。人間は使えないから、手を触れずにいろいろなことができる魔族が気味悪いらしい。
それから寿命。
人間の方が短いから、残された魔族はけっこう辛いそうだ。
ミスティ村は、他の場所で迫害された人たちがようやくたどり着いた安住の地なのだ。
そういうことを乗り越えた恋人同士が、ようやくたどり着いた安住の地。でも、人間の方が先に死んでしまって、亡くなってしまった恋人を想って、孤独な世界を生きる。
きっと、私の方が長く生きるから、愛しい人が死んで、残った人生を悲しんで生きなければならなくなる。その人を想って、泣いて泣いて、哀しくて哀しくて、花に囲まれても、哀しくて。
愛しい人を想って……
でも、リアムなら、そういう心配はない。
こっちを見ないようにしていたリアムをこっそりと見た。
魔法が使える女の子なんて、恋愛対象として見てもらえるんだろうか?
それに、私も魔族と付き合うとか、考えたこともないし……
一緒にいたいからミスティ村に来たわけで、人間の村とか魔族の城とかにはいられない。
年齢もちょうどいいし、同じ魔族と人間の混血だし……。
ひとりで魔王の城まで行けるのはすごいと思うけど、門番のモリーには敵わないわけだし。
むしろ、とってもいいヤツだ。
なんだかんだ言って、何かと気が付くし、お姉ちゃんたちに使われるところはあるけれど、さりげなく優しいし。
でも、一択なのだ。
比較対象がない。
選べないのだ。
そんなことを……
その通りではある。
いらないと言おうとしているのはわかったけど、それでも強引に押し付ける。
観念したようにリアムは言って、バスケットを受け取った。それを膝の上に置いて、手持ち無沙汰な感じで両手で押さえていた。
と、念を押す。
素な感じでリアムが言う。たしかに、クソまずい状態でも、魔法を使った後に食べたおいしい状態でも、チョコの味はしなかった。
魔力がない時だけ、超絶においしくなるお菓子。
いいえ。お菓子でもない。
ただの、魔法のグッズってこと。
チョコレートを渡したわけじゃない。
何の問題もないわ。
リアムは迷惑そうな顔をした。
間抜けた顔でリアムが言った。
やっぱり、リアムはお子様ね。
そう思ってため息をついた。
だって、リアムとだと禁断の恋にならない。
それは何か違うような気がした。