第8話 二人の姉たち
文字数 1,913文字
そして、バスケットを持ったリアムの頭に止まった。
降りてきた衝撃もあり、リアムの頭が前に倒れた。
揃った声がして、ピーちゃんに続いてお姉ちゃんたちが走ってこっちにやってきた。
二人に囲まれた。
近くて少し驚いた。
怒ったようなブレンダお姉ちゃん、安心させるかのように微笑しているミランダお姉ちゃん。それぞれがそれぞれなりの心配そうな感じで来てくれた。
そんなお姉ちゃんたちを見ていたら、じわっと涙が出てきた。
心配そうな声で、ブレンダお姉ちゃんが言って、きゅっと肩を抱かれた。
いつの間にか、リアムはマントをすっぽりとかぶっている。
ブレンダお姉ちゃんのレシピの通りなら、フワフワなチョコマフィンができていたはずだから。
わたしの代わりにミランダお姉ちゃんが答えた。
困ったことをした子供をたしなめるように、お姉ちゃんはわたしに言う。
言われてみたら、ミランダお姉ちゃんは「トッピングしろ」と言っていた。あれは完成品にふりかけろということだったのか? それなら、ブレンダお姉ちゃんのフワフワなチョコマフィンの上に、少しだけあの薬っぽい実が乗った程度で、ここまですごくまずいお菓子にはならなかったかも……。
ミランダお姉ちゃんもブレンダお姉ちゃんも、わざと私にこんな物を作らせようとしていなかった。心配して来てくれて、抱きしめてくれて、怒ってくれて……。
そう思ったら、涙が出てきた。
余計に涙が出た。
怒るというより、心配しているようにブレンダお姉ちゃんが言った。
優しくミランダお姉ちゃんに言われて、言葉に詰まった。
ミランダお姉ちゃんが、わたしの顔を覗きこむ。
まるで、言ってはいけないことを言ってしまって、声が出るのを止めるみたいに。
すると、ミランダお姉ちゃんが、わたしとブレンダお姉ちゃんを優しく抱きしめた。
そう言うと、ブレンダお姉ちゃんが、力強く抱きしめてきた。
強く強く、ブレンダお姉ちゃんは言った。
わたしが使う魔法は、何も直さない。
壊してばかり。
ふたりに抱きついて、思いっきり泣いた。