たましいの代わりに削り落としたら黒ずみ消えてわたしきれいに

文字数 291文字

 に、かける、ご。十個あったキューブは残り二個半。立方体が組み合わさった形のこの消しゴムを買った日に私は決意した。甲高い笑い声と不安を煽る忍び笑いから逃れるために、セーラー服に袖を通さない生活、それがこれ以上許されないと決まった日だった。
 この消しゴムをすべて使い終わるまで学校を辞めない。死なない。
 親が半年間で学校に喜捨した金額のことを思えば、馬鹿みたいに安い。消しカスを払い落とすごとに、遠回しな言葉や行為で「消えろ」と言われた自分の魂の一部を削り落とせた気がした。卒業まであと三か月。大丈夫。学校は卒業するし、死を選んだりしない。要らないものは消せた。机の上は今日も綺麗だ。
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