第5話 みんなで月見

文字数 1,080文字

夜になった。

空には満月が昇り、その下に母さんが生けたススキが揺れていた。

綺麗です……
ほんと
ススキ、

思っていた以上に満月に合うかも

空に上がった満月を観て、みんなで感想を言っていた。
団子もうまいぞ
シイナには

情緒って物がないの?

じゃあ、要らないか?
分け前が増える。
食べる
増えなかった。
俺も
ハルトも食べた。
私もいいですか?
小さな声でお姫様が言った。
どうぞ
皿に乗った団子を取り分けて、小さい皿に乗せるとお姫様に渡す。
ありがとうございます
お姫様が月見団子を食べる。
まあ

美味しいです

たくさん作ったから

いっぱい食べてね

母さん、餡子とかは?
美味しいけど白い団子だけだと飽きる。

だから母さんが作った餡子とかを乗せて食べると味が変わっていくらでも食べられる。

あるわよ

餡子の他に、みたらしにずんだに大根おろしにショウガとか醤油とかも用意してあるわよ

シイナんちって、

変った味付けだよな

緑色のずんだを団子につけて食べたハルトが言った。

ずんだは俺も好きだ。

邪道だけど

チョコレートやクリームやチーズも用意したから付けてみてね

そっちが

邪道なんだ……

どれも美味しいです

お姫様は思っていたよりもたくさん食べていた。
母さん

十五夜って、何するの?

満月の夜に月を眺めながら

美味しい物をいっぱい食べるのよ

なんで?
なんでかしらね
え?
母さんの故郷では母さんが小さい頃から

秋になると満月にお月見してたの

理由なんて知らないけど

美味しいお団子がたくさん食べられたから

母さんは十五夜が大好きだったわ

もちろん

月もススキもウサギも好きなんだけどね

そーなんだ
やっぱり

シイナのお母さんの故郷って行ってみたいかも

とっても遠いけど

あなたたちならいつか行けるかもしれないわね

今は

行けないの?

もうちょっと

レベル上げを頑張らないとムリかしら

がんばる
しばらく村でゆっくりするんじゃなかったのか?
しばらくゆっくりしたら

がんばる

俺も
え?
しばらくゆっくりしたら

がんばる

まあ、そういうことなら

俺もしばらくゆっくりしてからがんばる

私も……
小さな声でお姫様は言った。

空耳かと思えるくらい小さな感じだったから、誰も反応しなかった。

お腹一杯になったら

月でも観ましょうか

お腹がいっぱいになると

いつもよりも綺麗に見える気がする

そうか?

お腹一杯かどうかは

関係ないんじゃない?

お腹空いてるよりは

穏やかな気持ちでいられる気がする

みんなで観てるから

綺麗な月に見えるんじゃないかな?

そうかも
はい
みんなで満月を観ていたら、狼の遠吠えが聞こえてきた。
お父さん、近くにいるみたいね

お団子、食べに来るかしら

母さんが嬉しそうだった。
(十五夜って、悪くないかもしれない)
と思った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

主人公:シイナ

魔王を倒した勇者見習い。

剣も使えて魔法も使える。

極めているわけではない器用貧乏。

ハルト

シイナとルカの幼馴染で魔王を倒した仲間。

軽いけれど天才肌の魔法使い。

女子からモテる。

ルカ

シイナとハルトの幼馴染で魔王を倒した仲間。

シイナのことが好きだけど言わない。

一緒に冒険がしたかったから戦士になった。

めちゃめちゃ強い。

アリーナ姫

魔王にさらわれていた大国の姫。

生まれながらのお姫様。

シスターになる教育を受けていて治癒魔法が使える。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色