第1話 十五夜にススキと月見団子
文字数 922文字
幼馴染の戦士のルカと魔法使いのハルトと一緒に、弱い魔王を倒した。
いくら弱いとは言え、くさっても魔王。魔王を倒せば勇者になるのは常識だった。
とどめを刺したのが俺だったから俺が勇者になった。魔王を倒せそうという時になって、急に二人が手を抜いたからだ。
俺はそんな程度の勇者。
どこにでもいる、ふつうの獣人。
魔王に捕らえられていたお姫様をお城に返して、生まれ育った村に帰ってきていた。
魔王を倒してお姫様を助けてきたんだし、少しくらい休んでもいいと思う。
冒険者を休日にして家にいると、両親(主に母さん)の使いっぱしりのようになる。
善人な狼男の父さんは、人間の母さんと結婚した。
でも狼男だから、満月の日は狼になってしまう。
狼男は月を見ると狼になると言われている。けれど父さんは、普段は人間だけど満月が近づいて来るとうずうずしてきて、満月の日には月を見ていなくても狼になる。
父さんは夜に満月に向かって吠える。
昼はそのための準備をしているらしい。
よくわからないけど、たぶん。
そんなことを思いながら、母さんから受け取った買い物リストを見ていた。
うまかった。
よくわからなかったけど、店主に聞けばわかるだろう。
いつも思うんだけど、母さんの故郷ってドコなんだろう?
よくわからなかったけど、お金を受け取って家を出た。