第15話 切ってねえのでセーフ
文字数 2,464文字
セシリーが、思わず折れた刃を叩き落として、大切な愛銃を確認する。
「あーーーーー!!!! おっさん!あたいの銃に傷が付いたわ!どうしてくれんのよ!
助けたんだから金ちょーだいよ!金!!」
倒れて呆然とするおっさんの襟首つかみ、セシリーが金を強請る。
「え、え、そんなこと言ってもよ……」
「なんでもいいから今すぐ何か売って金作って来るのよ!命助けてやった恩人よ!
あんたの顔知ってるわ、ククク……郵便局舐めんじゃ無いわよ。」
あああ、またセシリーがブラックな事をやってる。
それを放って、リッターが息を切らせてサトミに声を上げた。
「 ストーーーップ!ストップだ!サトミ! お前、殺しやったか?」
問われて、うーんと考える。振りをする。ニッコリ微笑み、可愛らしく首を傾げた。
「あー、どうだろうなあ。うん、もちろんやってねえよ。」
「こっ!このガキッ!!何とぼけてやがる!!」
「だって、俺切ってねえもん。おっさんたち、勝手に撃ち合って死んだじゃん?」
確かに、盾にしたが殺ってない。
「ふっ!ふざけやがって!このガキッ!!」
のんびり答えるサトミに、ボスが真っ赤な顔でつばを飛ばす。
サトミが、ははっと笑ってナイフでボスの後ろのカジノを指した。
「あんた、のんびりしてっと大事なカジノ燃えちゃうぜ?」
え?っと、ボスがハゲてツルツルの頭で振り向く。
カジノはモクモク、黒い煙が充満している。
「あんた、葉巻どうした?自分で燃やしてちゃ文句言えねえよなあ。クックックック!」
「 わああああああああああ!!!!!わしの店ぇぇ!!!!!! 」
バーンッ!
「げぇっほ!げこっ!げほ!ごほっ!」
倒れた男二人両手にぶら下げて、何故かレイルがすすで真っ黒になって飛び出してきた。
他の男達も、彼女を追って床を張って出てくる。
レイルが手当たり次第、男達の背中を掴んで外へ放り投げた。
「げほっごほっ、ひっどーい!くっさいの、もーやだー!」
さすがに目が冷めたのだろう。スーツは前全開で、ジャケットは羽織ってるがすすで真っ黒だ。
彼女が開けてきたドアはギイッと自動で閉まる。
サトミがナイフを投げ、入り口の縁に刺すとドアが引っかかって完全に閉まらず少し浮いた。
「ボスー、すいません。必死こいて消そうとしたけど、全然消えなくて〜〜!!」
「ああああああああああ………」
ボスがガックリその場に膝を付く。
ギャラリーの一人が、ハッと我に返って声を上げた。
「か、か、火事だ!!みんな水もってこい!バケツだ!!ポリスに走れ!消防に連絡だ!!」
町の衆が慌てて家に走る。
この町の消防はポンプ車2台しかない。
初期消火は必須なのだ。大火になったらもう諦めるしかない。
「他の奴どうした。まだいただろう。」
サトミがレイルに問うと、彼女は隣の壁により掛かって座り込む。
誰かがくれたタオルで、真っ黒な顔をゴシゴシふいていた。
「知らない、真っ暗で見えないんだもん。
でも奥に部屋があるみたい、ドアが開かないって……声が……げほ、ごほ、ごほっ」
カジノは窓もドアも少なく、恐らくここにいる奴ら以外は奥の部屋に放り込まれたのだろう。
小さなカジノだ。まあ、死んでなければ、まだ生きてるはずだ。
「 たすけてぇ…… 」
小さな、その小さな声が、サトミの耳に聞こえて、ふと顔を上げた。
まだ、消火栓やホースの用意にもたついて消火が始まっていない。
カジノの横の壁に沿って奥に行く。
リッターと、シェンが後に付いていった。
「どう……」
どうした?と聞きかけると、サトミが手を上げ制する。
奥の角まで行くと、急に立ち止まって壁を向いた。
「この向こうだ、生きてる奴4人いる。 おい!ドアは閉じてるか?」
「……ドアが……あかないんだよぉぉ………」
シェン達は聞こえないので顔を見合わせる。
だが、サトミには、小さな、小さな声が壁の向こうから聞こえる。
「ドアは開けるな!!壁から離れろ!」
「………わかった、わかったよ………」
小さな声が、返事したのが聞こえた。
シェンが石壁を叩く。
「崩すか?俺も手伝う。」
「いや、こう言うのなんて言うんだたっけな。
戦時中、火をつけても消したこと無いんだよなー、俺。
ま、最小限に正確に開けないと爆発的に燃えるって事は知ってる。
よし、てめえは離れろ。俺がやる。」
「えええぇぇぇぇ、マジか………」
壁切る宣言に、リッターが思わず引く、シェンも怪訝な顔で少し離れた。
サトミが目を閉じて手を壁に当て、何かを確認する。
3歩離れて壁の前に立ち、一息大きく息をついた。
目を閉じ息を整え、だらんと下げた右手を大きく広げ、すべての気を右手に集中する。
そしてすらりと背の刀を抜き、右手一本で上段に構えた。
「 はっ!!! 」
声を上げると同時に、下へ一気に振り下ろす。
壁が、ヒビが入ったような音を立てて震え、一本の線が入った。
一歩ずらして下段から上へ振り上げ、もう一本平行に縦の線2本入れる。
「 もう一本!! 」
気を切らさず、クルリと刀を返し、ドッと上に横一閃した。
「 仕上げえぇっ!!! 」
勢いでクルリと舞って、後ろ蹴りで壁を蹴る。
メキッ! メキッ!! ドーーーーーン!!!!
壁が切られて4角に大穴が空いた。
その壁は、防音の為かボードを二重に貼って外はコンクリで固めてある。
頑丈で結構な厚さだ。
「 マジか………ほんとに切った……… 」
リッターの目が驚愕して死んだ。
が、それどころじゃない。
シェンが急いで中に顔を突っ込むと、狭い物置にレイルにやられた4人が転がっている。
股間を腫らして歩けず、シェンが服を掴んで引きずり出す。
これで生存者、みんな出てきた。
「た、たすかっ…………た…………」
「はあぁぁ、息子折った上に焼け死ぬなんてゴメンだ……」
「俺、救助呼んでくる!」
リッターが、救助を頼む為に表通りに走る。
それを見送ると、サトミが男たちにニッと笑った。
「おい、お前ら」
「え?」
刀を突きつけ、じろりと助け出された男達をにらむ。
助かったとホッとしたところで、男たちはまた違う恐怖に駆られて息が止まりそうになった。
「あーーーーー!!!! おっさん!あたいの銃に傷が付いたわ!どうしてくれんのよ!
助けたんだから金ちょーだいよ!金!!」
倒れて呆然とするおっさんの襟首つかみ、セシリーが金を強請る。
「え、え、そんなこと言ってもよ……」
「なんでもいいから今すぐ何か売って金作って来るのよ!命助けてやった恩人よ!
あんたの顔知ってるわ、ククク……郵便局舐めんじゃ無いわよ。」
あああ、またセシリーがブラックな事をやってる。
それを放って、リッターが息を切らせてサトミに声を上げた。
「 ストーーーップ!ストップだ!サトミ! お前、殺しやったか?」
問われて、うーんと考える。振りをする。ニッコリ微笑み、可愛らしく首を傾げた。
「あー、どうだろうなあ。うん、もちろんやってねえよ。」
「こっ!このガキッ!!何とぼけてやがる!!」
「だって、俺切ってねえもん。おっさんたち、勝手に撃ち合って死んだじゃん?」
確かに、盾にしたが殺ってない。
「ふっ!ふざけやがって!このガキッ!!」
のんびり答えるサトミに、ボスが真っ赤な顔でつばを飛ばす。
サトミが、ははっと笑ってナイフでボスの後ろのカジノを指した。
「あんた、のんびりしてっと大事なカジノ燃えちゃうぜ?」
え?っと、ボスがハゲてツルツルの頭で振り向く。
カジノはモクモク、黒い煙が充満している。
「あんた、葉巻どうした?自分で燃やしてちゃ文句言えねえよなあ。クックックック!」
「 わああああああああああ!!!!!わしの店ぇぇ!!!!!! 」
バーンッ!
「げぇっほ!げこっ!げほ!ごほっ!」
倒れた男二人両手にぶら下げて、何故かレイルがすすで真っ黒になって飛び出してきた。
他の男達も、彼女を追って床を張って出てくる。
レイルが手当たり次第、男達の背中を掴んで外へ放り投げた。
「げほっごほっ、ひっどーい!くっさいの、もーやだー!」
さすがに目が冷めたのだろう。スーツは前全開で、ジャケットは羽織ってるがすすで真っ黒だ。
彼女が開けてきたドアはギイッと自動で閉まる。
サトミがナイフを投げ、入り口の縁に刺すとドアが引っかかって完全に閉まらず少し浮いた。
「ボスー、すいません。必死こいて消そうとしたけど、全然消えなくて〜〜!!」
「ああああああああああ………」
ボスがガックリその場に膝を付く。
ギャラリーの一人が、ハッと我に返って声を上げた。
「か、か、火事だ!!みんな水もってこい!バケツだ!!ポリスに走れ!消防に連絡だ!!」
町の衆が慌てて家に走る。
この町の消防はポンプ車2台しかない。
初期消火は必須なのだ。大火になったらもう諦めるしかない。
「他の奴どうした。まだいただろう。」
サトミがレイルに問うと、彼女は隣の壁により掛かって座り込む。
誰かがくれたタオルで、真っ黒な顔をゴシゴシふいていた。
「知らない、真っ暗で見えないんだもん。
でも奥に部屋があるみたい、ドアが開かないって……声が……げほ、ごほ、ごほっ」
カジノは窓もドアも少なく、恐らくここにいる奴ら以外は奥の部屋に放り込まれたのだろう。
小さなカジノだ。まあ、死んでなければ、まだ生きてるはずだ。
「 たすけてぇ…… 」
小さな、その小さな声が、サトミの耳に聞こえて、ふと顔を上げた。
まだ、消火栓やホースの用意にもたついて消火が始まっていない。
カジノの横の壁に沿って奥に行く。
リッターと、シェンが後に付いていった。
「どう……」
どうした?と聞きかけると、サトミが手を上げ制する。
奥の角まで行くと、急に立ち止まって壁を向いた。
「この向こうだ、生きてる奴4人いる。 おい!ドアは閉じてるか?」
「……ドアが……あかないんだよぉぉ………」
シェン達は聞こえないので顔を見合わせる。
だが、サトミには、小さな、小さな声が壁の向こうから聞こえる。
「ドアは開けるな!!壁から離れろ!」
「………わかった、わかったよ………」
小さな声が、返事したのが聞こえた。
シェンが石壁を叩く。
「崩すか?俺も手伝う。」
「いや、こう言うのなんて言うんだたっけな。
戦時中、火をつけても消したこと無いんだよなー、俺。
ま、最小限に正確に開けないと爆発的に燃えるって事は知ってる。
よし、てめえは離れろ。俺がやる。」
「えええぇぇぇぇ、マジか………」
壁切る宣言に、リッターが思わず引く、シェンも怪訝な顔で少し離れた。
サトミが目を閉じて手を壁に当て、何かを確認する。
3歩離れて壁の前に立ち、一息大きく息をついた。
目を閉じ息を整え、だらんと下げた右手を大きく広げ、すべての気を右手に集中する。
そしてすらりと背の刀を抜き、右手一本で上段に構えた。
「 はっ!!! 」
声を上げると同時に、下へ一気に振り下ろす。
壁が、ヒビが入ったような音を立てて震え、一本の線が入った。
一歩ずらして下段から上へ振り上げ、もう一本平行に縦の線2本入れる。
「 もう一本!! 」
気を切らさず、クルリと刀を返し、ドッと上に横一閃した。
「 仕上げえぇっ!!! 」
勢いでクルリと舞って、後ろ蹴りで壁を蹴る。
メキッ! メキッ!! ドーーーーーン!!!!
壁が切られて4角に大穴が空いた。
その壁は、防音の為かボードを二重に貼って外はコンクリで固めてある。
頑丈で結構な厚さだ。
「 マジか………ほんとに切った……… 」
リッターの目が驚愕して死んだ。
が、それどころじゃない。
シェンが急いで中に顔を突っ込むと、狭い物置にレイルにやられた4人が転がっている。
股間を腫らして歩けず、シェンが服を掴んで引きずり出す。
これで生存者、みんな出てきた。
「た、たすかっ…………た…………」
「はあぁぁ、息子折った上に焼け死ぬなんてゴメンだ……」
「俺、救助呼んでくる!」
リッターが、救助を頼む為に表通りに走る。
それを見送ると、サトミが男たちにニッと笑った。
「おい、お前ら」
「え?」
刀を突きつけ、じろりと助け出された男達をにらむ。
助かったとホッとしたところで、男たちはまた違う恐怖に駆られて息が止まりそうになった。