第17話 新型音響兵器

文字数 2,604文字

「すかー、すかー、すかーーーっ」

ブラブラぶら下げてるレイルはすっかり熟睡で、目を覚ます気配が無い。
頭ブラブラさせて、でっかい口開けて、よだれたらして寝ている。
何度見ても、ため息しか出ない。

「これでチンチン立つかよ、バーカ。」

家に入ると、どこに置くか考えて、自分の部屋の向かい、両親が使ってた部屋に立つ。
ここはベッドはあるがマットが無い。
こんな酔っ払いに布団なんか贅沢だとは思うが、なんだか両親の音が記憶に残る部屋を他人に荒らされたくない。
結局居間に戻って、ベンのクッションにドスンと放った。
大股広げて前も閉じてないので、パンツまで丸見えだ。
Bカップのブラの片方がずり上がって、乳首まで見えていた。

ため息ついて、火に鍋かけてココアを作り始める。
ココアを混ぜながら、じーっとレイルを見る。

「女は胸見せると恥ずかしいんだと、女の士官見習が言ってたけど、酔っ払うと関係ないのか。
なんで女は胸が膨らんでるんだろうな。
うっかりさわるとセクハラ指摘されるし、めんどくせえ生き物だ。」

棚からフォークとって、傍らにしゃがみ込む。
フォークの先でスーツのファスナーを引っかけ、ジーーーっと上に上げてフタをした。
んあ?っと声を上げ、レイルが薄目を開ける。
まあ、一応声をかけた。

「お前、俺が寝てるとき俺の部屋開けるなよ、家を血で汚したくねえから。
まあ、お前が死んでもどうでもいいけど、家は汚したくねえ。
トイレは廊下の突き当たり、途中俺の部屋の前で立ち止まるな。
うっかり黒蜜飛ばしたら、お前は明日の朝日が拝めねえから、そん時はゴメンな。
俺はそう言う男だ。寝癖だから仕方ねえ、それは事故だ、諦めろ。
じゃ、明日無事だったらよろしく。
幸運を祈る、グッドラック。」

「くかーーーーーーふ〜〜〜〜ぴーーーー」

聞こえたか聞こえてないか、きっと聞いてねえだろうけど、一応忠告はしたし。

軍いた頃は、最初の頃、なぜか同室がよく死んで、気味悪いと同室になる者がいなくなった。
一人になっても、たまに朝起きたら部屋の前で人が死んでたけど、どうも全部俺が殺したらしい。

だから俺は角の大部屋に一人になって、廊下も通行止め、夜間の俺への連絡はすべて電話にしてもらった。
これじゃキャンプ出来ねえなと思ってると、キャンプの時はそれはなかったから、こう言う気を抜く場所が問題なんだと思う。

うーむ……

我ながら、なかなかやっかいな寝癖だ。
軍に来てから、色々あって変な寝癖が出来てしまった。
よって俺のチームは宿舎に帰ると、寝る前に俺の前でこれ見よがしにグッドラックを連呼しやがる。
まあ、それも見慣れた景色だった。

他人はどうも警戒するんだよなあ……
馬は大丈夫だし、家族も……家族なら大丈夫と思うんだ。

女のイビキ聞きながら悶々とココア飲んで、筋トレして、シャワー浴びて、すっきりしたところで刀の手入れをする。
今日は人を切らなかったから、雪雷も綺麗なものだ。
壁切りは刀で切るわけじゃ無い。
あれは〜、なんか良くわからねえが、石割りと同じ様な感じで、俺もなんかわからないけどなぜか切れる。
切れると確信が持てる。
不思議なもので、切れない時は、切れねえってわかるから不思議だ。
ずいぶんと軍ではめんどくせえ奴らが来て調べられたけど、あまりしつこかったからジンがなんかやらかして来なくなった。
まあ、俺はなんか……

「やっぱ、普通じゃねえんだろうなあ……雪。」

刀2本とも取り出し、黒蜜の刀身から古い油を拭き取りながらつぶやく。

「なあ黒よ、ヒマだなー。まあ、お前がヒマなのは良いことだわ。
まあ、諦めて、お前は静かに寝てろ。」

新しく油を塗って、刀を組み立てて鞘に戻す。


そうやって、いつもの彼の日課を済ませ、そして電気消して、寝た。
女は寝てるので何も変わらない夜で、ちょっとホッとする。
静かな夜だ、明日の朝は早いから、寝坊しないようにしなきゃ……な………


…………………

…………………

………ピーーーーーーーーーーーーー

………ガーーーーーーーーーーーーー


モゾモゾ、サトミが寝返りを打つ。



ピーーーーーーーーーーーーーーーーー

ガーーーーーーーーーーーーーーーーー

ピーーーーーーーーーーーーーーーーー

ガーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして、布団をかぶった。
布団の中で、耳を押さえる。


ピーーーーーーーーーーーーーーーーー

ガーーーーーーーーーーーーーーーーー

ピーーーーーーーーーーーーーーーーー

パチッと目が冴え、バンッと布団をめくる。

「一体何だ、この騒音は!耐えがたい!クソ女、外に放り出す!」

たまらず起きて刀を背負い、居間に向かった。

ピーーーーーーーーーーーーーーーーー

ガーーーーーーーーーーーーーーーーー

ピーーーーーーーーーーーーーーーーー

ガーーーーーーーーーーーーーーーーー

「俺はどうしたらいいんだ。
こいつの首、すっ飛ばしたい。」

レイルを見て、そう、つぶやくしか無かった。

レイルは暑かったのかスーツは脱ぎ捨て、布面積の小さなブラはすっかりずり上がり、スキャンティ一枚の状態で大の字で寝てる。
肝心のスキャンティーからも、いろいろはみ出してR18の様相だ。

サトミはがっかり首を振り、テーブルの新聞を一枚取ると、広げてレイルの胸と股間にかぶせた。
もう、出来れば目にボカシを入れて欲しい。

「なんてことだろう、俺は女性不信になりそうだ。
こんなヒドイ女が、家の中にいるなんて。
父さん母さん、すまない。今夜一晩許してくれ。

ああ、こんな奴連れてくるんじゃなかった。
外に放り出せば、きっと隣の婆ちゃんに迷惑かける。

この『ガー』はガマン出来るけど、『ピー』がガマン出来ない。
まるで、新型の音響兵器だ、高周波で頭痛がしてくる。
馬屋に放り込むと馬に影響が出る、納屋は馬屋に近い。

寝ないと朝が来る、考えてる時間が惜しい、仕方ない。
こんなセリフ、俺は隊長の時も一度も言ったこと無いのが自慢だったのに、まったく屈辱だ!


このクソ野郎!これは戦略的撤退だ!敗北では無い!」


クルリときびすを返し、自室に向かうと毛布と枕を持って馬屋に向かう。
馬屋に入るとワラを足して、ベンの隣に枕を置いて横になる。
寝ていたベンが頭を上げて、じっと見てヒヒッと笑った。

「さびしい、さびしい〜」

「寂しいんじゃねえよ!家を明け渡すなんて最悪だ。
ひでえ夢見そうだ、クソ女め。」

とは言え、ふかふかのワラに包まれ、ベンの横は意外と落ち着く。
サトミはすぐに寝息を立てて、熟睡した。
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登場人物紹介

レイル・グラント

デリーの新入りアタッカー。ダークブラウンのセミロングの髪、目はブラウン。

ミスが多く、脳天気で頻繁に強盗に襲われる。

酒を飲むと羞恥心が消える。いや、飲まなくても羞恥心はないのかもしれない。

・サトミ・ブラッドリー

日系クォーター、15才。黒髪、ブラウンの瞳。短髪だがボサボサ。中肉低身長、禁句はちっこい、チビ。

使用武器、主に背の日本刀

・ジェイク

デリー本局のリーダー、古参アタッカー。戦中からアタッカーをやっている強者。面倒見のいい男。

レイルの面倒で胃に穴があきそうな感じ

・セシリー・メイル

17才。プラチナブロンド、碧眼、白人ではない。

リッターとは父親違いの兄妹、可愛い系美少女。人を見て選別し、ガッツリ甘える世渡り上手。

馬は青毛の大きい馬ナイト、銃は見た目で選んだスバス。

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