第21話  LOVE LOVE ダーリン

文字数 2,160文字

ダーリンが、マジマジあたしを見てふうんとつぶやく。

「そうだな、あん時はダンクに来てもらったが、ストックがまた貯まったからそれはいいな。
ダンクは飽きやすいから人員は多いに限る。
よし、じゃあ2時間だ、みっちり新聞の朗読だ。覚悟してこい。」

「新聞??なあんだ、なんかもっといいことかと思った!
もっとさー、女の子と二人っきりなんだし〜、えへ!こう、セックス講習会とか〜」

くねっくね、お尻を突き出してみる。

「もういい、却下だ。お前は来るな。」

「ウソッ!!ウソです!真面目に新聞読みます!!

ねえねえ、このリッチな寄付したのってぇ、誰助けたの〜?
すっごい美人マダムだったりして、やだ〜!!ダーリン浮気しちゃイヤ〜ン!!」

ほっぺをグーで挟んで、キャピキャピしてみる。


が、、、、何故か、ダーリンが不気味にニヤリと笑った。


「   え   ??  」


なんだか、背中をザアアッとよく冷えたコーラが流れた。……様な気がした。

後ろから、キャミーが 「ああ!」 と明るい声を上げる。

「ほら、レイルがサトミの家に泊まった日、町のカジノが火事になったのよ。
その時逃げ遅れた人たち助けたんですって。
それでね、なんか保険かなんかでお金がいっぱい入ったから、善意のお礼ですって。
殊勝な人もいるものよねえ、なんでもこれからはカタギに戻って、美味しい中華のお店開くんですってよ!
中華のお店ってロンドで初めてできるの!今度一緒に食べに行きましょ?」



「  ……… うふふふっ ……… そ、そうね ………  」


ヒクヒク、、あたしは、頭が、   まっっっっ   ちろになったわ。    


え?どういう事???


え???   つまり。


この、きれーな椅子も。

この新しいデスクも。

休憩所のベッドも。

こいつが頼む、妙にお高い砥石も。

それから、それからああああ、リッチに買い直すらしいレインスーツも!!!



ぜーーーーーーーんぶ、あたしのおかねえええええぇぇぇぇぇ!!!!!!!



「ねえダーリン、ちょっと話があるんだけどぉ。」

「俺はない。じゃあな、また会おう。」

バーンとドア開けて、サッと出て行く。

「ちょっと!ダーリン!!逃げるなあああああ!!!」

「いいツラ拝ませてもらったぜ!ハハハッ!!」

ドアの向こうから清々しい笑い声!!ジョーダンじゃ無いわよ!!
あたしは泡食ってあとを追った。
絶対あいつ一枚噛んでるじゃん!!

「冗談!
これからここに来るたびに、あの忌まわしい!恥ずかしい!思いが!
何度も!何度も何度もおっ!!思い出されるのよぉっ!!」

ドア開けて見たら、見事にサッと馬に飛び乗って走り出す。

「じゃあな!!ベンッ!!飛べっ!!」   

ドカッドカッドカッ!ガッ  ガカッ!! ドカッドカッドカッ!!!!

「あああーー!!!マジいいいぃぃ!!やだ、カッコイイーー!!」

ゲート飛び越えて行っちゃった!

ピッピーーーーッ!!ピピピピピーーーーーー!!!

突然、ゲートの警備員の姉ちゃんが飛び出して、めっちゃ怒りながら走って追いかけた。

「コラーーーー!!サトミーーー!!ちゃんとゲート通りなさーーーい!!
規定いはーーーーーーん!!ピピーーーーッピーーーーーーーッ!!」

「ちょ、サトミ!何やってんのよーー!!すいませーん!あとでボコっときますからー!」

帰ってくるわけも無く、キャミーが飛び出して警備の姉ちゃんに平謝り。
ふっ、きっと始末書だわ、ざまあみろ。

「もー、はっや!逃げ足くそ早い!ダーリン、日曜覚えとけーーーー!!」

ため息ついて、ダーリン見送り腰に手をやる。

「グフフ……グフフフフ……」

笑いがこみ上げ、思わず投げキッス。

「どしたの?うちのサトミがなんかやらかした?」

キャミーが不思議な顔してのぞき込む。

「やらかしてくれたわー……。
つかさー、あいつに言っといてよ。
あんなはした金、痛くも痒くも無いわ〜って。
好きなだけ使うといいわよ、金のかかる男だーい好き!
どうせパパのお金だもん!」

「お金?なに?」

「何でもなーい!」

お尻を振って、部屋に戻ると綺麗なソファーにボスンと座る。

「あー、いい座り心地。日曜日は嫌がらせに嫌いなものでも買っていこうかしら。
ねえキャミー、あいつの大嫌いって何かな?」

キャミーはうーんと考え、ニッコリ微笑む。

「ねえ、何あったか知らないけどさ。
大好き持ってって、うっめえーー!!って、キラッキラした目のあの子見てる方が楽しいんじゃない?」

「ほおおおー、なっる〜キャミーって、大人〜〜!!」

「へっへー」



そうして、土曜の夜、張り切って焼いたあっまーいバターケーキに、あっまーいバタークリーム塗ってチョコであたしの気持ちを書いたの。
もちろん、書いたのは、

『 LOVE LOVE DARLING !♡ 』

ただし日曜日、馬に乗ってロンドに着いた時はバタークリームに文字が溶けてグッチャグチャで

「汚え!これが食いもんかよ!」

って言われたけど、味は満点、だってあたしが作ったバターケーキ、マズいはず無いじゃない?

「 なんだこれ、すっげえうっめえーー!! 」

って、一口食べるなり、キラッキラした目で叫ぶ子犬のようなダーリンもイイものよ。
ま、その後死ぬほど新聞の朗読が待ってたけどね!

これがデート??!!面白くなーーーーい!!!

まったくさ!!

LOVE LOVE ダーリン、デンジャラスLOVE !! だわ!
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登場人物紹介

レイル・グラント

デリーの新入りアタッカー。ダークブラウンのセミロングの髪、目はブラウン。

ミスが多く、脳天気で頻繁に強盗に襲われる。

酒を飲むと羞恥心が消える。いや、飲まなくても羞恥心はないのかもしれない。

・サトミ・ブラッドリー

日系クォーター、15才。黒髪、ブラウンの瞳。短髪だがボサボサ。中肉低身長、禁句はちっこい、チビ。

使用武器、主に背の日本刀

・ジェイク

デリー本局のリーダー、古参アタッカー。戦中からアタッカーをやっている強者。面倒見のいい男。

レイルの面倒で胃に穴があきそうな感じ

・セシリー・メイル

17才。プラチナブロンド、碧眼、白人ではない。

リッターとは父親違いの兄妹、可愛い系美少女。人を見て選別し、ガッツリ甘える世渡り上手。

馬は青毛の大きい馬ナイト、銃は見た目で選んだスバス。

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