血の詰まった袋

文字数 407文字

 ある有名な作家さんがね

 人間は血の詰まった袋だ
 しかし単なる血の詰まった袋ではない
 そのことに人間の悲劇の本質がある
 とか何とか言ってんだけど
 でもさ…

 そんなことなら誰でも知ってるし
 誰でもよく分かってる…
 と思うんだよね
 そんなことより

 この血の詰まった袋とやらが
 血の詰まった袋のくせに
 お洒落したり
 カッコつけて異性の気を引いたり

 血の詰まった袋のくせに
 どうでもいい肩書を血眼になって求めたり
 お金や名声をなりふり構わず追いかけたり

 血の詰まった袋のくせに
 互いに罵倒し合って
 傷つけたり
 傷つけられたりして

 それなのに
 別の血の詰まった袋を心底好きになって
 愛し合ったり
 助け合ったり
 抱き合ったりしてさ
 よく分かんないけど
 こいつら
 意外と毎日懸命に生きてんだよね
 血の詰まった袋のくせに

 僕はそのことに悲劇よりも
 愛おしさや
 時には偉大ささえも感じたりする


 あの…
 皮肉で言ってんじゃないよ  
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