小麦色のコムギ②

文字数 1,184文字

 コムギが大好きなビスケット
 それは…
 僕が作るビスケットだった

 人間のビスケットは犬には良くない
 だからコムギの体に合う食材を考えて
 僕が作ってあげていた
 小麦入りだけど砂糖やミルクは極力控えめなやつ
 意外と手間がかかるので
 作る時は一気にまとめて作り
 それを作り置きして袋に入れておくんだ

 その日…
 コムギはビスケットを夢中で食べていた
 ただね…
 どうしてもコムギが食べている後ろの棚から
 取り出さなきゃいけない物があったので

 コムギ
 ちょっとごめん…

 そう言ってビスケットの入ったお皿を取り上げてのけようとした
 すると
 僕に向かって一声
 
 ワン❢

 って吠えたんだ
 しかもちょっと歯をむき出しながら
 メチャびっくりしたよ…
 だって今までコムギに吠えられたことなんて一度もなかったから
 傍にいたお母さんもエッ❢てな顔して驚いていた
 そして誰よりコムギが
 なんかスゴい悪いことしちゃった…
 ってな表情を浮かべてその場に固まっていた
 それで僕は

 ひどいよねコムギ…
 もう許さないんだ

 て顔を腕に埋めて泣いたふりをした
 腕の隙間から様子を伺っていると
 コムギはどうして良いか分からずに
 アタフタ迷っている様子だったけれど
 散々迷ったあげく
 結局ビスケットを食べ始めた

 お母さんがそれを見て

 おっ
 食べてる食べてる❢
 ユウキよりビスケットだね…

 そう言って手を叩いて笑った
 僕も可笑しくて可笑しくて笑ってしまったけれど
 取り敢えず泣いたふりを続けていた

 コムギは綺麗に平らげて
 お皿を最後の一粒まで舐め終えると
 今度は一目散に僕に擦り寄って来た
 でも

 コムギ嫌い❢
 もう向こうに行って❢

 って少し突き放したような素振りをした
 するとコムギは
 ふあぁぁ~
 とか何とか
 言葉みたいな悲しい声を発しながら
 どうしていいか分からない様子で
 隣でグルグル回っていた

 お母さんが
 コムギ❢
 どうする❓
 ユウキ怒ってるよ
 泣いてるよ
 どうする❓どうする❓
 って煽りたてた
 するとコムギは何を思ったのか
 いきなり台所の方へ走って行った

 僕は顔を上げて

 あれ❓
 何しに行ったの❓

 ってお母さんと顔を見合わせた
 するとコムギがビスケットの袋を咥えながら
 また戻って来るのが見えたので
 僕は再び腕に突っ伏して
 え~んえ~んって
 泣き真似を続けた

 コムギは僕の元に戻るや否や
 その袋を体に擦り付けてきた
 僕は顔を上げて

 これ
 僕にもくれるの❓

 って尋ねるとコムギは
 うんって言ってるような表情で僕を見つめた

 それで1個取り出して食べた

 おっ
 これ人間にはちょっと物足りないけどさ
 でも美味しいよ
 いける❢
 コムギには丁度良い甘さだよね

 ありがとう
 美味しかったぁ
 じゃあコムギにももう一つあげるね

 それでもう1個ずつ二人で食べたんだ
 仲直りです

 コムギ
 邪魔してゴメンね
 一生懸命食べてたんだよね

 
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