17才

文字数 840文字

 17才のとき
 ある歴史家さんの書いた本に
 こんなことが記されていて絶句した

 縄文時代初期の日本人の平均寿命って
 およそ…
 17才

 嘘…
 嘘に決まってる
 いくらなんでも若すぎでしょ
 僕なんかもう死ぬ年齢じゃん…

 でも
 そっか
 そうだよね
 よく考えてみると…

 着る服や寒さを凌ぐものさえほとんど無く
 火も自分で起こさなきゃいけない
 食べ物は毎日自分の手で見つけ(あるいは捕まえ)なきゃだし
 バランスのとれた食事を摂るのはもちろん
 飢えを凌ぐことすらままならなかっただろう

 オマケに病院や薬なんて無いから
 ちょっとした怪我や炎症や風邪
 下手をすると虫歯でさえも
 死に至る病になり得たに違いない

 ただ
 それにしても
 17才か…

 17才の僕には
 よほどショックが大きかったんだと思う
 その晩こんな夢を見た

 雪が舞う寒い夜だった
 僕は洞窟の中にいた
 家族や仲間たち
 そして子どもたちと身を寄せ合って
 (おそらくパートナーは“奥さん”なんだけど既に亡くなっていた…)
 わずかな火と互いの体温で暖を取り合っていた
 仲間や子どもたちはみんな
 僕がもう先の短いことを知っていた
 そして僕もそのことを悟っていた
 短い生を終えようとしている僕は
 下の子どもたちに向かって何かを語っていた
 (確か男の子と女の子だったと思う)
 何を話したのかまったく思い出せないけれど
 彼らは小さな指で僕の手を強く握り締めながら
 幼いながらも真剣な眼差しで僕の話しに聞き入っていた
 そして僕の目を見つめながらその言葉の一つ一つにしっかりとうなづいていた
 小さな体を抱き寄せたとき
 体の温かさとあまりの小ささに
 思わず涙がこぼれ落ちた

 それで僕は目が覚めた
 流れ落ちた涙で枕が濡れていた
 でも身を起こして涙を拭うと
 不思議と悲しさは吹き飛んだ
 代わりに手の力強さと温もりとが
 再び蘇ってくるのを感じた

 同時に鳥の囀りとともに
 陽の光が川となって部屋に流れ込んできた

 そうだ
 今日はこれからテストだった
 行く準備しなきゃ…
 
 


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