51 アウンな男神・後篇

文字数 843文字

**

 窓外の月を眺めながら、カゲヒコさんの言葉を思いだす。ブレスレットを翳す。緑色の翡翠のさきに、銀色の月。

『ウン、ツクヨミに怒られた。グーで殴られた。アーときた。オレは惚れた。ウンときた。オレはツクヨミのため、アー、国ツ神のために剣を作った、ウン』

 明らかに昔のツクヨミのため、だ。カゲヒコさんはマッチョなM体質だ。
 凄いよ。国ツ神、天ツ神の人生(神生)を変えるなんて。同じタダの女神で生まれたけれど、生きた人生(神生)は違う。
 私はクエビコさん、オオクニヌシさんがいなかったら、ニウヒメさん、タカヒメ、ワカフツヌシさん、スサノヲさん、キューピーちゃん、そしてトミビコさんと遇わなかったら、東京(じつは埼玉)で、平和な、4コママンガのように平穏な生活を……。
「おくってたほうが、いいじゃんッ。楽しかったじゃんッ」拳を強く握る。
「ど、どうした、ツクヨミ。つ、月に向かい、叫んで」
 狭い床の間に立てかけられたクエビコさんが驚く。
「なんでもない。ちょっとだけ、憤った」

 マッチョなM体質神か。眼鏡ヤンデレ神よりもいいけれど……。
「ツ、ツクヨミ。月を見ながら想うと、老けるぞ。い、いや、違う。月神は見ても、老けないか。笑える。わ、笑えないか、ツクヨミ」
 集まる独り神は、なんでクセが強すぎるの。私のパズーは、だれなの。
 ラブコメが始まるのは、いつなの。
「オ、オレの話を聞いてるのか。そうだ。地震の神の、は、話だ。煩いワカヒコがいない。や、やっとふたりきりになれた。……な、なんだ、ツクヨミ」

 アー、考えてもしかたがない。ウン、シャワーを浴びよう。
 ラブコメの主役として戦況を確かめ、戦局を動かすための、戦法を考える。
 だいたい、八百万柱もいながら、なんでヘンな神様ばかり集まるんだ。作者の作為を感じる。ビミョーなところで読者に媚びる。ラブコメはコメディがメインでない。メインはラブだ、ラブ。
「クレイジーだ、ゲロゲロだ」

「お、おい、ツクヨミ、どこに行く。オ、オレの、オレの、オレの話を、聞けェ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み