第6話
文字数 1,125文字
脳内修羅場が過ぎ去って一週間がたった頃。
俺は修羅場の原因となった元凶を学校内で見つけてしまった。
180センチの長身ひょろりとした細身に品の良い背広を身に着け銀縁眼鏡をかけた菊留義之。
数冊の本を抱え、図書室の入り口で女教師と楽しそうに談笑している。
あの嘘つき!何が銀行マンだ!!やっぱり、この学校の教師じゃねーか!
足早に近づき殴りかかろうとする俺を寸での所で止めたのは角田先輩だった。
「止せ!!高森」
羽交い絞めにされながら尚ももがく俺、驚いて立ち尽くす先生と生徒たち。
「落ち着け、高森、一体どうしたんだ」
先輩の問いかけに脱力した俺はその場にへたり込む。
「もう……、なんだか、わけわからん」
手で顔を覆いながら呟く、精神的に限界だった。
「大丈夫かい?高森君、……君、ちょっと話を聞かせてもらった方がいいみたいだね。」
先生は周りの生徒に各部活へ散るように言って、女教師に口止めしてから俺に話しかけてきた。
間違いなく授業で朗読していたあの声。懐かしささえ覚える菊留先生の声だ……。
先生に先導され角田先輩に付き添われて、俺はカウンセリングルームに移動した。
大き目のテーブルに椅子が四つ、まだ空調がきく季節ではなかったから暑気を払うために窓を開け放った。
「さて、お茶でも入れようか、君たち、紅茶でいいかな」
食器棚から茶器セットを取り出しテーブルに並べながら先生が言う。
無言で頷いた俺は、何気に傍らに立つ角田先輩を見上げた。
本日のいで立ちは藤色の小袖に薄墨色の袴を着けている。
部活を抜け出してきたのは明らかだ。
放課後、部活に熱心な先輩がなぜ、あの場にいたのかわからない。
偶然にしてはタイミングが良すぎた。
「ああっ、これ?今度の書道パフォーマンスでぜひ着てくれって言われたんだけど。墨がついたら取り返しがつかないから全力でお断りしたんだ。そしたら写真だけでもってうるさくて……」
誰に言われたんだか……全然、困った風じゃない先輩の言に苦笑しながら言う。
「先輩、部活行っていいですよ。俺、後から行きますから」
「いや、ここにいる。気になるからね」
その会話を聞いていた先生が入れたばかりの紅茶を飲みながら口をはさんだ。
「珍しいですねぇ。角田君、君が人に固執し優しくするなんて」
「心外ですね。先生僕はいつだって誰にでも優しいですよ」
心がこもってないのは丸わかりだった。
口元は笑っていたが目は少しも笑っていない。
どちらの口調にも含みがあるのは明らかだった。
「意味深だなぁ、高森君、彼が同席しても構わないかい」
「……はい」
「では聞こうか、私を殴りたくなった訳を」
俺は修羅場の原因となった元凶を学校内で見つけてしまった。
180センチの長身ひょろりとした細身に品の良い背広を身に着け銀縁眼鏡をかけた菊留義之。
数冊の本を抱え、図書室の入り口で女教師と楽しそうに談笑している。
あの嘘つき!何が銀行マンだ!!やっぱり、この学校の教師じゃねーか!
足早に近づき殴りかかろうとする俺を寸での所で止めたのは角田先輩だった。
「止せ!!高森」
羽交い絞めにされながら尚ももがく俺、驚いて立ち尽くす先生と生徒たち。
「落ち着け、高森、一体どうしたんだ」
先輩の問いかけに脱力した俺はその場にへたり込む。
「もう……、なんだか、わけわからん」
手で顔を覆いながら呟く、精神的に限界だった。
「大丈夫かい?高森君、……君、ちょっと話を聞かせてもらった方がいいみたいだね。」
先生は周りの生徒に各部活へ散るように言って、女教師に口止めしてから俺に話しかけてきた。
間違いなく授業で朗読していたあの声。懐かしささえ覚える菊留先生の声だ……。
先生に先導され角田先輩に付き添われて、俺はカウンセリングルームに移動した。
大き目のテーブルに椅子が四つ、まだ空調がきく季節ではなかったから暑気を払うために窓を開け放った。
「さて、お茶でも入れようか、君たち、紅茶でいいかな」
食器棚から茶器セットを取り出しテーブルに並べながら先生が言う。
無言で頷いた俺は、何気に傍らに立つ角田先輩を見上げた。
本日のいで立ちは藤色の小袖に薄墨色の袴を着けている。
部活を抜け出してきたのは明らかだ。
放課後、部活に熱心な先輩がなぜ、あの場にいたのかわからない。
偶然にしてはタイミングが良すぎた。
「ああっ、これ?今度の書道パフォーマンスでぜひ着てくれって言われたんだけど。墨がついたら取り返しがつかないから全力でお断りしたんだ。そしたら写真だけでもってうるさくて……」
誰に言われたんだか……全然、困った風じゃない先輩の言に苦笑しながら言う。
「先輩、部活行っていいですよ。俺、後から行きますから」
「いや、ここにいる。気になるからね」
その会話を聞いていた先生が入れたばかりの紅茶を飲みながら口をはさんだ。
「珍しいですねぇ。角田君、君が人に固執し優しくするなんて」
「心外ですね。先生僕はいつだって誰にでも優しいですよ」
心がこもってないのは丸わかりだった。
口元は笑っていたが目は少しも笑っていない。
どちらの口調にも含みがあるのは明らかだった。
「意味深だなぁ、高森君、彼が同席しても構わないかい」
「……はい」
「では聞こうか、私を殴りたくなった訳を」