死ぬな、と
文字数 281文字
死ぬな、と
わたしの思い出がわたしに命じるから
わたしは生きている
わたしには苦痛な思い出があり、それらは絶えず死ねとささやいているように思える
それは違う、と
今夜、静かな気分のいまなら
一夜かぎりの勇気によって言える
わたしを死に追いやる痛みが
不思議なまわり道でわたしを生かしていた
わたしは思い出のすべてを愛していた
思い出にあらわれる人々を愛していた
わたしが愛せないわたしの加害性を留保しながら
癒えない矛盾に譲歩しながら
存在は善だと肯定しないまま
わたしが見つめる不幸を許していた
死ぬな、と
わたしにわからないやり方で
無数の声が生まれていた
わたしの思い出がわたしに命じるから
わたしは生きている
わたしには苦痛な思い出があり、それらは絶えず死ねとささやいているように思える
それは違う、と
今夜、静かな気分のいまなら
一夜かぎりの勇気によって言える
わたしを死に追いやる痛みが
不思議なまわり道でわたしを生かしていた
わたしは思い出のすべてを愛していた
思い出にあらわれる人々を愛していた
わたしが愛せないわたしの加害性を留保しながら
癒えない矛盾に譲歩しながら
存在は善だと肯定しないまま
わたしが見つめる不幸を許していた
死ぬな、と
わたしにわからないやり方で
無数の声が生まれていた