セリフ詳細

「その昔、夜に飛ぶ変わったカラスがおった。二匹のつがいのカラスで、夜の空、真っ黒な体で、獲物を探し飛び回っていた。ある夜のことだった。メスのカラスが、空の上から声を聞いた。きれいな星は、いらんかね。と、メスのカラスが見上げると、一匹の蜘蛛が夜空にゆらゆらと浮いていた。あら、きれいな星ね。いただけるの? メスのカラスが問いかけると。蜘蛛は、ああー、もちろんだよ。こっちにおいでー。と言った。メスのカラスは夜空を上へ上へと羽ばたいた。やがて蜘蛛の元へたどり着くと、メスのカラスの体は動かなくなった。星々に張っていた蜘蛛の糸がカラスの体に絡みついたのだ。メスのカラスは声を上げようとしたが、蜘蛛の糸がくちばしに絡んで声は出なかった。蜘蛛はカラスにゆっくりと近づき、真っ黒な、きれいなカラスだー。と笑った。メスのカラスが居ないことに気づいたオスのカラスはメスのカラスを探し、飛び回った。だが見つからなかった。いつも、獲物を探すため下ばかり見ているオスのカラスは、星空を見上げるという発想がなかった。下ばかり見ていると、上にある大切な物に気づかず、上ばかり見ていると下にある大切な物に気づかない。そういうお話しじゃ」


作品タイトル:九百年と三十年

エピソード名:第三十話、昔話

作者名:畑山  hatakeyama

45|ファンタジー|連載中|43話|91,689文字

吸血鬼

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九百年、吸血鬼として生きた男が、人間となり吸血鬼を狩る物語