セリフ詳細
なんという無茶苦茶なことだろう! なんと道理にはずれたことだろう!
そのジェムナルとかというのがどれほど遣り手な男かは知らないが、結婚資金でオークションをやるような奴に優勝の目などあるわけがない。気高さを決める大会なのだから、正気の沙汰とは思えない。証拠に、こうして借金地獄の娘をひとり産み出してしまったではないか。
それにしても、あの娘の言っていたこともまた事実だな、ペアで出場する大会なのだから、相手の男の力量にも結果は左右されるのだ。
メイとペアを組むスィンディーナの息子はまさかヘマをしないだろうな……私の金が賭かっているというのに。いや、スィンディーナの血を嗣ぐ者だ、彼女の聡明さはまた私も知っているはずではないか。往々にして優れた家系のものからは優れた子孫しか生まれないもの。
我が娘のメイにしても、我が妻の高貴さが遺してくれた才華の残り香をそっくりと受け継いでいるのだから、あの娘の利発さは全て妻のの遺産なのだ。なにせ、私はこのとおりの卑しい商売エルフ、わが血筋には何もない、悪いところこそ継がせはしなかったが、いいところなど唯一つも継がせては居ないのだ。
私がメイに負わすところなど、せいぜい自力で立てないうちの世話くらいで、それだって小間使いに任せきりだったではないか。どうして彼女にとやこう言えよう。生まれながらにして父親だったという、あの特権的地位以外で? ありえない。しかし、そんな私にもメイは従ってくれるのだ、あの子は本当に良く出来た娘だから。
エルフの都で大会が開催される。それは最も優れたエルフの男女を決める為の祭典だった。みずからの娘であるメイの勝利を確信するイルビスは、ジェムナルとの結婚を目論むフローリアに金を貸す。この証文が波紋を呼び起こし、栄光をめぐる物語の幕は開いてゆく。
戯曲
なろうに投稿したもの