セリフ詳細

ここでさらに注意が必要なのだが、

通常、はたらきというと、たとえば、ぼくが机を押すように、

実体Aが実体Bに加える力、とか、まぁ要するに、

ある実体が、ある実体へ影響を与えることだ、と思われてしまう。

だが、これは違う。

色即是空、空即是色の思想では、そもそも実体は無いのだから。

真に実在するのは〈はたらき〉のみである。

この〈はたらき〉の中から、〈はたらき〉において、本来はありもしない実体が、あたかも実体としてあるかのように立ち現れているだけなのだから。

実体Aが実体Bへ、はたらきかける、のではなく、

いわば〈はたらき〉の渦中から、実体Aが、実体Bが、ホントは実体ではないけれど、あたかも実体であるかのように、それぞれ立ち上がってくるのだから。

つまり、実体Aも実体Bも〈はたらき〉と共にあり、〈はたらき〉からは切り離せない。

作品タイトル:西田幾多郎を読む

エピソード名:『善の研究』を読む②

作者名:千夜一夜読書人  nomadologie

19|社会・思想|連載中|9話|32,364文字

哲学, 西田幾多郎, 善の研究

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哲学者・西田幾多郎の著作を順番に読み進めていきます。