セリフ詳細

いや、まぁ、きっかけっていうか、決定的だったのは、会社の飲み会があって、少しお酒を飲んで帰ってきたんです。それで、しばらく酔いを覚ましてから、お風呂に入ったんです。椅子に座って髪を洗っていると、例の音がしましてね。しかも、ゴン、の方です。ああ、まずいって思いましたね。あわてて、風呂の水を頭からひっかぶりました。早く出ようと思ったんです。立ち上がろうとすると、足の裏がにゅるって、いつもより気持ち悪い感じがしたんです。

 足下に、何かいるって感じたんです。何もいないんですよ。でも、とにかくなにかいるって思ったんです。何か柔らかいものがタイルの上にいるって、見えてもいないのに触れてもいないのに、それがこっちをじっと見上げている。そんな風に感じたんです。本当に気持ち悪くてね。私は足を上げて叫び声を上げました。今考えるとみっともない話ですよ。女房が駆けつけてくれて、とにかく浴室の外に出ました。なんだか、嫌な気持ちになりましたよ。いや、変なものがいたっていうのもあるんですが、駆けつけてくれた女房の顔がね。なんだか少し怖かったような気がするんです。少しね。


作品タイトル:じゃぼん

エピソード名:じゃぼん

作者名:畑山  hatakeyama

20|ホラー|完結|1話|1,838文字

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