セリフ詳細

いや、百姓一揆って偶発的な暴動、ってわけじゃないぞ。実際、半ばルーティーン化してもいたんだ。
まず最初に、正規の手続きでさ、年貢減免とかを要求する。それが通らないといよいよ一揆になる。ただし、一揆はアナーキーな暴動と違い、遵守すべき掟があった。たとえば放火などはタブー視されていた。お家に刀や鉄砲があっても持ち出さず、あえての農具、あえての農作業姿で行った。
なんでかっつーと、そもそもお殿様は仁君であるべきであり、百姓の生業維持を助けるのが当然の責務だ、とする通念があったわけで、一揆することでな、そういった責務を果たせよと、アピってるんだ。要するに、こういうときは年貢をおまけするのが筋だろ、ってね。これを近世史家は「仁政イデオロギー」と呼んでいる(3)
つまり昔の強面幕藩領主ですら、単純に〈奪う権力〉一辺倒だったわけじゃないんだ。百姓一揆は領主から「お救い」を引き出すためのデモンストレーションという側面があり、逆から言うとだ、領主には「お救い」をしなければならぬ、という〈与える権力〉的側面があったわけだ。

作品タイトル:哲学BARへようこそ! - 国家とはなにか?-

エピソード名:  国家のない社会(2)

作者名:千夜一夜読書人  nomadologie

18|社会・思想|連載中|21話|74,412文字

哲学, 思想, 言論, 国家とはなにか, 哲学カフェ

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「哲学カフェ」小説です。
『ソフィーの世界』のようなものだとご理解(ご容赦)ください。
内容に関する間違いの指摘や批判など、大歓迎ですので、ご意見いただき、
随時update訂正していきたいと思います。
そうなりますとまさに「電子版・哲学カフェ」ですね・・・