セリフ詳細

『ワンピース』は現実世界の何かを問題にするというよりは、勧善懲悪の道徳思想に基づいて、武力により、より強い圧政者を倒していくことを描くことを主題の一つにしているように思います。


たとえば、リク王を排除し、国王の座についたドン・キホーテが支配するドレスローザでは、トンタッタ族が奴隷労働させられ、シュガーの能力によっておもちゃにされたものは、記憶を消され労働に従事させられていました。ルフィ達がドフラミンゴファミリーを倒すことでトンタッタ族やおもちゃは強制労働から解放され、リク王が復位することになりました。


また、カイドウ率いる百獣海賊団とオロチに支配されているワノ国では、花の(みやこ)以外、人が住める場所ではないと言われるほど荒れており、武器工場の建設により川は汚染され、光月(こうづき)おでんが作った農園、桃源農園(とうげんのうえん)はオロチたちによって接収(せっしゅう)されていました。ルフィたちがカイドウやオロチを倒すことで、ワノ国は圧政から解放され、のちに名将軍と称されることになる光月モモの助によって統治されるようになりました。


百科事典で、勧善懲悪、解放戦争について調べると次のような記述を確認できます。


【勧善懲悪】


江戸時代にあっては,ひろく大衆を思想的に啓発し,嚮導(きようどう)する文学・演劇が,基本的に持つべきとされる,文学的原理であった。曲亭馬琴(きょくていばきん)にいたり,この勧懲原理(かんちょうげんり)は,〈弱きを助け,強きをくじく〉義俠(ぎきょう)の思想と結びつき,善悪邪正が葛藤(かっとう)角逐(かくちく)しあう伝奇的長編小説のなかに,民衆が待望する理想的英雄像をつくる,有効な小説原理となった。(株式会社平凡社世界大百科事典 第2版)


明治になり、曲亭馬琴(きょくていばきん)勧懲主義(かんちょうしゅぎ)を批判して、坪内逍遙(しょうよう)は人情の模写を小説の第一義の目的とした₂。(日本大百科全書)


【解放戦争】


ナポレオンに対する諸国民の解放戦争に由来し,近代国民国家の形成過程において,民族を外国支配から解放する戦争をさしていたが,20世紀に入り被圧迫人民(ひあっぱくじんみん)を支配階級から解放する戦争をも意味することになった。(ブリタニカ国際大百科事典)


これをふまえると『ワンピース』は、理想的英雄像である革命勢力が、圧政を行う支配階級を武力によって打倒し、彼らに隷従している被圧迫人民を解放することが主題の一つになっており、勧懲原理や義俠思想といった文学的原理に基づいて描かれることがあるといえるように思います。

作品タイトル:ビブリオカフェ

エピソード名:ワンピースの元ネタと主題

作者名:本の虫  AnUnknownHand

9|その他|連載中|28話|52,528文字

哲学, 文学, 宗教

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