セリフ詳細
春休みも残すところあとわずか。お彼岸で帰っていた親戚連中がそれぞれの家に戻る日がきた。玄関先に荷物を置いて、のんびり雑談してたと思ったら――。
出立の時間になって、一番下の従姉妹の姿が見つからないらしい。大人たちは大慌てだ。大声で名前を叫んで探し回っている。広い屋敷に広い庭、どこもかしこも大騒ぎ。
知ってるのに、あの子の隠れる場所くらい。訊けば教えてあげるのに。
僕はこっそり庭におりた。
ほら、壁に沿った庭の外れ。幾重にも被さる雪柳の花の下。揺れる白波の間をぬって、重たげな枝をそっとよけると――。
白い木綿のワンピースが丸くなってる。
見つけてもらうのを待ちくたびれて、眠りかけてる。
呆れ顔の僕を寝ぼけ眼が見あげてる。
彼女は口を尖らせて、顔をしかめて人差し指を立てている。
「しいっ! ずっといっしょにいてあげるからね」
花言葉をお題にした掌編集を、作りたいなと思いました。
参加してくださる方→好きな花を選んで頂き300-500程度の小さなお話を投稿してください。
作中、特に表記のないイラストは、全てイラストACさんよりダウンロードした、夢宮愛さん(https://www.ac-illust.com/main/profile.php?id=aichinnokobeya&area=1)の作品です。
小説だけでなく、お花にちなんだイラストや写真の投稿も歓迎です。