セリフ詳細
「ラベンダー」
母から引き継いだ庭は、あなたが好きだと言ったラベンダーの畑にしてしまった。
「好きなだけもって帰ってね。今年は紀子さんと三千ちゃんは来ないのね」
「三千が受験だから、ラベンダー摘みはあなた一人で行ってきて、だとさ」
「そう、残念だわ……。泊まっていけるんでしょう?」
「ああ、明日、親父とお袋の墓参りもしようと思ってる」
板張りの入縁側から、紫にけぶる庭を、二人並んで眺める。
「おまえ、もう嫁に行くつもりはないのか?」
「やだわ、もうおばさんよ。それに……」
おかしなものね、あなたを想って植えたのに、いつの間にか私が囚われてしまっている。
ときどき此処から助け出してくれる王子様を夢見たりするけれど、きっと私はまたこの庭に戻ってくるんだわ。
「ねえ、兄さん……」
花言葉をお題にした掌編集を、作りたいなと思いました。
参加してくださる方→好きな花を選んで頂き300-500程度の小さなお話を投稿してください。
作中、特に表記のないイラストは、全てイラストACさんよりダウンロードした、夢宮愛さん(https://www.ac-illust.com/main/profile.php?id=aichinnokobeya&area=1)の作品です。
小説だけでなく、お花にちなんだイラストや写真の投稿も歓迎です。