セリフ詳細

ところで、農耕は人を土地に縛りつけるだろ。人が動かないなら、管理しやすいよな。農耕を奴隷に押しつけるにせよ、そうでないにせよ、支配しやすい。また、穀物というのは課税対象にしやすい。測量により、ある土地からどの程度の収穫が見込めるか計算できるし、徴税仕事も年1回で済むからラクだし、穀物は貯蔵もきく。ジェームズ・C・スコットは「穀物国家」と呼んでいるが、古代の初期国家は、なによりまずはそういった土台がないと立ち上がってこれなかっただろう。
繰り返しになるが、農耕はコスパが悪かったけれど、戦争捕虜を使うこともできた。戦争というのは、定住による縄張り争いや、略奪動機からも生じたろうが、そこで得られた奴隷は連れて帰って生産労働に充てることができる。そうなると自然、共同体内には支配する側と支配される側、といった階層秩序が生まれてくることになるだろう。それに穀物は課税システムの構築に適合的だからさ、富を収奪したい支配者には好都合だわな。

作品タイトル:哲学BARへようこそ! - 国家とはなにか?-

エピソード名:  穀物国家の誕生(2)

作者名:千夜一夜読書人  nomadologie

18|社会・思想|連載中|21話|74,412文字

哲学, 思想, 言論, 国家とはなにか, 哲学カフェ

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「哲学カフェ」小説です。
『ソフィーの世界』のようなものだとご理解(ご容赦)ください。
内容に関する間違いの指摘や批判など、大歓迎ですので、ご意見いただき、
随時update訂正していきたいと思います。
そうなりますとまさに「電子版・哲学カフェ」ですね・・・