ウドゥンバラの華

[ファンタジー]

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 ある昔、一人の女が巨大な樹がある世界に迷い込んだ。その樹はカルパヴリクシャと言い願いを叶える神樹だった。さまよっているとある男と出会い自身が住んでいる場所まで案内される。そこは神樹を崇めている部族だった。驚くことに男には十一人の兄弟が居た。
 翌日、族長に呼ばれた女は自分が迷い込んだ訳を知り、初日に出会った男との婚姻を迫られ承諾する。そんな中族長は長らく患っていた持病が悪化し亡くなる。書斎を整理していると〝一族の繁栄を望む〟との遺言状が見つかりその遺言通りに兄弟らは準備をする。女はその男と一緒に旅立つことにし十二組に分かれて未開拓地へ散って行った。
 七年後再び集まった十三人は開拓した領土を元に国を興す事にした。だが二人の仲は冷え切っており、女は神樹を守る統治者に、男は一人戻って行った。只、幾つかの国では現地の部族を奴隷化していた。
 その数年後女は十二人の子供を産む。しかし、予知夢を見たことで国を興した十二人の元へ送る事を決意する。
 月日が経ち子供は王位を継ぐ程に成長したが神樹の掟を破り神罰を享けた。それと同時に神樹は十三の株に分かれ別々の方向へ飛んでいき、この広い大陸を十三に区切る様に不透明な壁が覆うのだった。国は崩壊し消え失せた様に見えたのだが、何故か奴隷になっていた部族の一部は生き延び新しい国を造っていった。
 元々、城の跡地だった所に高層ビルが立ち並び密集し十車線を越える運搬用の車道が幾つも這いその間からは毛細血管の様に細い道が分かれた都市が出来ていた。車は空に浮かび完全自動運転でインターネットによる情報の共有と割り振りの御かげで事故も渋滞もない完璧なものとなっていた。
 そんな都市に併設されている高校に通う栃佐野葵は平和な毎日とは似合わない自身の能力の差に煩わしい感情を抱いていた。葵の家は神力を継ぐ家系の生まれであった。世間では知る者は居なく栃佐野家を含め三家しか残っていない。
 そんなある日、栃佐野家に神の使者を名乗る人らがお願いしに来た。内容は十三株に分かれた神樹を集めるのに協力してほしい事、そして神樹を狙う企業らの手へ渡るのを阻止する事だった。
葵はこの家に生まれた事を何となく理解し承諾した。しかし、神樹を狙う企業らは使者が考えてるより深くより黒い影を落としていた。

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