麻取の極秘任務 真理とサス取材簿②

[ミステリー]

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 長野市の信州信濃通信新聞社の記者真理と佐介は、『老齢者医療施設医療設備計画』定例委員会を取材した。定例委員会は、長野市議会で建設が決定した『老齢者医療施設』の医療設備を論ずる場だ。長野市は、医院経営と医療活動を行う開業医と、総合病院の勤務医師の二派に意見を求めたが、老齢者医療施設を病院内に誘致するために建設計画をふりだしにもどそうとする育善会総合病院の遠藤院長によって定例委員会は紛糾した。
 深夜。多重衝突事故が発生した。事故を取材した真理と佐介は、事故現場に転がっている大麻の鉢植えを目撃する。大麻が薬用だったのではないと関心を持った二人は、信州中部の製薬会社を取材して、密かに厚労省が薬用大麻から新薬を開発しようとしている事実と、遠藤院長がカーマニアのドライバーに指示して大麻を入手して、医薬品開発から臨床試験まで育善会総合病院で行おうとしていた事を知る。
 院長は大麻を運んで多重衝突事故を起こしたドライバーの口封じを試みるが、真理の再従伯父、県警の佐伯警部に逮捕された。
 製薬会社を取材後、真理と佐介は信州中部の温泉ホテルに宿泊する。
 ここの若女将の亮子は真理の一卵性双子の妹で、真理と亮子は互いの意識と精神を自由に入れ換えられる特種能力者だった。佐介はこの時まで、亮子の存在も真理と亮子の特殊能力も知らずにいた。
 佐介は大浴場で、宿泊している麻薬取締官から、取材を中止するように指示され、二人の勤務先、信州信濃通信新聞社に取材禁止の圧力がかかった。佐介と真理と亮子は、取材続行を主張する編集長の指示で、佐伯警部と連絡を取りながら、麻薬取締官が何の目的で信州中部に滞在しているかを探り、麻薬取締官が薬用大麻栽培を指導していた事を知る。
 麻薬取締官は長野県警にも圧力を加え、薬用大麻栽培に関する捜査禁止を指示した。
 真理とサスケの取材で、大麻から不法に新薬を開発する計画は、麻薬取締官の上司の関与が判明するが、厚労省上層部から県警と信州信濃通信新聞社に政治圧力がかかり、捜査と報道はできなくなる。しかし、関与した麻薬取締官とその上司が事故死する。
 佐伯警部は特務官だった。特務官は政府が認めた独立した立法行政司法官だ。総理から閣僚全ての公務員を監督処罰できる統括的司法権を持っている。立場上、内閣官房所属だ。
 事件は全て暗黙裏に終った。事件の裏で佐伯警部が特務官として動いたのはまちがいなかったが、その証拠は無かった。
 真理は信州信濃通信新聞社の編集長が国家権力の圧力に屈して取材を禁じたと思ったが、事件関係者が消された今、取材を禁じた編集長の判断は正しかったと思った。佐介は、あってはならない事態を消去して事件を公にしないことが特務官の職務だ、と理解した。

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